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画像の出典 @tazzz1212さん
『うるさい、黙れ!こっちでやってるんだから口出すな!』
そんな罵声が飛んだのは9月27日に行われた安倍・元総理の国葬における現場警備の一コマ。何台もの警察車両が霞ヶ関のある交差点を通過する中でのことであった。
7月に奈良県内で演説中の安倍・元総理が狙撃され、警護対象者の後方がガラ空きだったこと、警護対象者が特定団体とのつながりを持つことに不満を抱く人間からの襲撃等が起きえる想定を考慮しなかったこと、奈良県警の警護員と警視庁SP間の連携不足など大きな課題を残した。そして職責を果たせなかった現場の警視庁SPには国民から多くの批判が相次いだ。
警備計画に瑕疵はなかったか、警察庁での検証および報告書の公表、警察庁長官の交代など矢継ぎ早に改革への一歩を踏み出そうとしているが、その開催に国民世論が割れる中、誰もが警備に不安を払拭できない中での安倍・元総理の国葬儀となった。幸い何事もなく国葬は終了し、テレビの前で人々は胸を撫で下ろし、個人の思いは違えど、あらためて多くの国民が故人の冥福を静かに祈っただろう。
しかし、国葬の裏側、すなわち警備の現場では連携不足とも取れる見逃せない極めて危険なハプニング、さらには失笑する事態が起き、SNS上で物議を醸している。
一体あの日、何が起きたのか?
警護車列が交差点内で停車してしまうハプニングが発生
ケースごとに異なるが、首相の日常公務における移動では出向先が随時変わるため、事前に制服警察官を交差点に配置させず、交通規制は最小限となる。しかし、要人を乗せた警護車両の車列が赤信号で停車すれば襲撃の危険度が増すことは言うまでもない。
そのため、現場のSPチーフが判断し、状況次第では警護車を赤信号の交差点に緊急走行で先行して突っ込ませ、誘導灯を手にしたSPが車から身を乗り出して一般車両の通行を阻み、警護車列を優先させることで危険を排除する場合もある。
防弾ガラスや特殊鋼の装甲が施された防弾仕様の『内閣総理大臣専用車』であっても、軽トラックの荷台に秘匿された対戦車ライフルや個人携行型対戦車ミサイル、あるいは自爆型で襲撃されようものならば、多弾数の軍用けん銃『ベレッタM92』や『グロック17』を携行する警視庁SPだけで応戦するのは極めて困難だろう。
皮肉なことに安倍元総理を襲撃した被疑者は元自衛官で、日本政府から軍事訓練を受けた特殊な人間だったとはいえ『単独型かつ個人製造の凶器による要人襲撃』が可能かつ、致命的な結果を引き起こせると証明してしまってさえいる。
今回の国葬警備では各国から多くの要人が来日したが、今回のようにルートがあらかじめ決められたケースでは事前に制服警察官が交差点などの要所に多数配置され、交通規制で一般車両の流れを一時的に止め、警護車列を優先させる手筈となる。
ところが今回の国葬警備の現場において、交通規制担当の現場警察官の不手際により、一般車両を停めきれられず、交差点内で警護車列が足止めを喰らうという大変危険な事態が発生してしまった。
動画内のキャプションによれば、問題の交差点中央で警笛を吹きながら誘導灯を大きく振っている制服の男性警察官がこの交差点付近の警備責任者のようだ。
彼は部下に対向車を止めるように指示を出し、自らも合図を出すが、両名共に一般車両への停止合図が弱かったのか、乗用車、タクシー、トラックなど対向の一般車両は交差点をほとんど徐行もせず、何事もなかったかのように通過していく。
その結果、動画の0:08付近で交差点内にて警護車列が”立ち往生”している様子だ。この様子には沿道の市民から失笑が起きている。
動画内のキャプションによれば『警護車両が交差点内に進入するも指示が行き届いておらず、警護車列が交差点内で停止してしまうハプニング』とのこと。指示及び連携不足が原因のようだ。
ところが、ハプニングはこれで終わらない。この事態に首相担当SPも肝を冷やしたのか、危険性をすぐさま排除すべく、警備責任者の警察官に『次終わったら出して!』と車を出すタイミングを拡声器で指示するのだが……。
SPの指示に罵声を浴びせた『警備責任者の警察官』
この指示を出したSPが返された言葉は意外なものだった。
『うるさい、黙れ!こっちがやってんだから!こっちでやってっから口出すな!』
動画内のキャプションによれば、怒鳴りつけたのは『警備責任者の警察官』とのこと。
まさに先述の交差点内で誘導灯を振りながら部下に指示を出し、部下と共に車を止められなかった同警察官と思われる。
あくまで『車を停める、車を流す』権限はこちら側にあると言いたげな物言いだが、そのようにお互いの立場と権限が拮抗するようでは、緊急事態に対処できるのだろうか。
何をもって緊急事態とするかはケースバイケースだろうが、先述した通り、真に危険が差し迫った場合には、交通規制担当の警察官よりチーフSPの判断を優先し、先導の制服PCやランクル警護車を対向に突っ込ませて強制的に流れを止め、警護車列は緊急走行で通過することも起きうるだろう。
そう考えると『車を停める、車を流す』指示を出す権限はSP側にもある、とも言えなくはないのではないか。
事前配置による道路の交通規制自体はSPではなく、所轄署の制服勤務員(この場合は警視庁の所轄)が行うのが通例とはいえ、今回の国葬警備では全国から多くの警察官が所属車両と共に派遣されてることから、罵倒した警察官の所属は断定できない。
とはいえ、同じ警視庁SP間の指示の行き違いで、こんな低レベルな”口答え”が起きるはずもなく、交通規制担当の制服警察官と警視庁警備部警護課のSPとの間で生じた”行き違い”というわけだ。
同じ警察官であっても、当然階級の上下もあり、所属の違う人間にはなおさら従えないという態度から生じたハプニングなのか。
この動画における制服警察官とSPのやりとりに対して引用ツイートで反応した人々の意見は様々だ。
グダグダじゃん😇
統率取れて無い警視庁。
よく無事故で終えられたな。
身内に対する言葉遣いもダメダメ。
見掛け倒しも良いところ。#警視庁 https://t.co/EUwhngwb1R
— TARO (@TaroRedbull0131) October 1, 2022
ただ、必ずしも『警備の責任者の警察官』の言葉遣いを責める声ばかりではなく、”動員されている現場”と意思疎通そのものが図れていない問題そのものに対して厳しい声が寄せられており、警備部のSP側にも問題があるという指摘も見受けられた。
テロを起こす気があるモノが居なくて幸いだっただけと言う現実😰
これで警視庁警備部って存在意義有るん?
動員されてる現場と意思疎通も交通規制も出来ない無能集団やん? https://t.co/uWx9S1wTZi— yas@中国共産党は全人類の敵 (@klymenos_x) October 1, 2022
また、彼ら現場の警察官の問題というよりは、悪徳政治家を選んだ我々国民側にも問題があるとの声もあった。
交通整理の不手際とか細かいことはどうでもいい。
長きに渡り国民のために働いてくれる政治家を選ばず、自分(政治家)のために国民、公務員を働かす政治家を選んできたツケを見せつけられているのだと思う。
悲しいことだ https://t.co/W5eYfdQ8Lj— EdogwaJogger (@miaodian) October 1, 2022
なお、この警護車両の車列には応援派遣された山梨県警などのパトカーがいたことから『ガラが悪すぎるぞ山梨県警w』という声があり、あたかも“山梨県警の警察官が警視庁SPを怒鳴りつけた”かのような一部指摘もあるが、先述した理由から罵声の主は警視庁の所轄署員の可能性が高く『警視庁の身内同士のいざこざ』と見られる。
なお『警備責任者の警察官』が怒鳴りつける寸前に通過したのは千葉県警のパトカーである。
ハリス・米国副大統領警護車列(重武装のシークレットサービス含む)の目前で歩行者を渡らせる不手際も・・・
また、先の場面の直後にも指示の行き違いが見られた。青信号を待つ歩行者を規制している女性警察官に対して、遠くから『渡して!渡して!』と指示する男性の声が聞こえる。
おそらくは先ほどの『警備責任者の警察官』だろうか。女性警察官らはその指示に従い、信号機を操作した上で歩行者を横断させた。
ところが、指示の主は米国副大統領の警護車列が来ていることに気がつかなかったようだ。
なんと、歩行者が渡り始めた直後、ハリス・米国副大統領および重武装のシークレットサービスを乗せたシボレー・サバーバン、SATや銃対を乗せたとみられるシボレー・エクスプレスを含む警護車列がやってきてしまう。
目の前で突然渡り始めた歩行者に驚いたのか、車列先導役のPCも思わず『(歩行者を)とめて下さい!とめて下さい!』と怒鳴り気味で指示を出した。
これに突っつかれた、さきほどの『渡して!』の指示を出したとみられる警察官が、今度は慌てて『回して!(※キャプションでは信号を変えろの意味とある)』との一貫性のない指示を出す。
これらの不手際に対し『警護車列は止めずに通過させる』ことの意義を理解してないのでは、との指摘も。
うわ、不手際ですね。
この交差点の警備指揮者は、何のための交通規制なのか理解していない。
車両を止めずに通過させることの意義が全く分かってないんでしょう。
こんな無能な人にこの交差点の警備指揮者をさせたのは誰? https://t.co/iCdioqVclk— 食彩旬感🌏🌻 (@kara_shokusai) October 1, 2022
あやふやな交通規制でとんだ事態に見舞われたハリス氏だが、幸いなことにこのハプニング以外に何事もなく、彼女のための警護車列は無事に交差点を通過できたようだ。
岸田首相担当SPが公衆の面前で現場警備担当者に罵倒されてしまった件のまとめ
全体的には滞りなく進行した今回の安倍元総理の国葬儀。しかし、その警備の現場では連携のツメが甘く、どうにも不手際が目立ってしまったようだ。
それにしても最終的な責任は警察庁本省の警備計画立案者にあるとはいえ、現場の一責任者から『うるさい、黙れ!』と罵られた岸田首相担当SPは、さぞや悔しかっただろう。しかし、要人警護中に公衆の面前で警察官同士が指示を巡って口論でもすれば、さらに警察の信用が失墜しかねない。
いや、それどころか車列を狙ったテロ等の危険性を排除できない。相手にせず、自身の任務を優先したSPの冷静な判断は言うまでもなく正しい。
むしろ、怒鳴った『警備責任者の警察官』は、その後のハリス副大統領の警護車列でも失態を演じていることを考慮すれば、勤務評定が危ういのではないか。
安倍・元総理を護りきれず、任務を完遂できなかったSPたちへの同じ警視庁警察官からのきつい侮辱か、直接の指揮系統にないSPに指示を出されたことが気に食わず激怒したのか、その罵倒の真意は不明だ。
しかし、制服警察官が本部警備部の精鋭SPを公衆の面前で憚らず怒鳴りつけるという珍事は人々に深い印象を与えたらしく、10月1日現在、1500を超える『いいね!』がついている。
また、この記事を執筆している10月1日の午後になり、警視庁が今回の国葬警備にあたっていた警察官のけん銃4丁を一時紛失していたことを明らかにした。
けん銃は他県警察本部から応援派遣された警察官に貸与されているもので、警視庁の警察官が預かり、ジェラルミンケースに銃を収納した上で、ロッカーに保管していたが、ケースが入ったまま、ロッカーをリース業者に返却してしまったという。
銃は全て回収されたとのことだが、一度に4丁ものけん銃を紛失する失態は、あってはならない極めて重大な事態と言わざるを得ず、今回の警備計画もまた課題が残された形だ。
安倍元総理への銃撃を防げなかった警視庁SPに瑕疵があるかないかの検証作業は当局側や有識者会議となるだろうが、今回の国葬儀の警備・警護でまたも起きたハプニングや不祥事に多くの市民は失望したはずだ。警視庁は名誉挽回どころか、またしても面目を失ってしまった。
この失点が取り戻せる日が来ることを願うばかりだ。