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私たちは何事でも「アメリカでは……」と一括りにしがちだが、連邦制のアメリカ合衆国では自治の権限、法制度は州ごとに違いがあることにあらためて留意が必要だ。
連邦制国家では各州はすなわち『国』であり、それは合衆国憲法に「合衆国憲法により合衆国に委譲されていない権力は、各州あるいは人民が保有する」として規定され、さらに同憲法第4条(保証条項)では「合衆国は、共和制の政府形態を各州に保証する」と明確に規定されていることからも判るとおり。
つまり、事実上アメリカには中央政府である連邦政府と、各州政府の『二つの政府』が存在し、連邦政府の憲法および州政府の州憲法が並行しているのだ。連邦政府や州政府という言葉、それに平時には州知事の命令で動く州独自の軍隊・州兵まで保有する現実にそれがよく表れている。
それゆえにそれぞれの州政府、郡、市、町、村の自治体が、行政区画ごとに法執行機関(警察または保安官事務所)を設置するほか、中央政府である連邦政府は、アメリカ全州にわたって法執行を行える権限を持つ連邦政府の法執行機関を設置する。
この各州政府の自治権限の高さゆえに、A州で行われた犯罪の犯人がB州へ逃げても、A州の警察がB州内に出向いて捜査を行うことは基本的に不可。しかし、犯罪者にとって好都合なことを許す連邦政府ではない。全州にわたって逃亡する犯人を追えるのは、アメリカ全州にわたって法執行を行える権限を有する連邦政府の法執行機関というわけ。例えば、FBI、USマーシャルやATFといった機関だ。
一方、アメリカの各州では組織としての警察以外にも一部の国立公園や大学、NASA、民間企業、民間団体に法執行組織(POLICE)の設置が認められ、”警察権”が与えられていることも特筆に値するだろう。
かつては日本でも郵政省に郵政監察官、国鉄の中に独自の警察である鉄道公安職員(鉄道公安官)がいたが、どちらも民営化により司法警察権を手放しており、日本人の感覚から言えば民間の中の警察権はかなり奇異だろう。ただし、日本でも大型船の船長など一部の海員は民間人の中で唯一、司法警察権を持っている。
一方、アメリカの警察には市民ボランティアによる補助警察制度がある。もちろん、これは正式な警官の資格を持つ制度で、日本の青色防犯パトロールのような地域住民主体の自主防犯活動とは違う。
フィラデルフィア警察ではポリスアドバイザーというボランティアが、イギリスにもボランティアが警官を務めるSpecial Constable制度がある。通常の警官と違って無報酬だが、一般の警官とほぼ同様の権限を持つ。
それではアメリカの警察についての疑問点や日本警察との違いなどを各コラムごとにまとめたので、ドーナツとコーヒーを喫食しながら暇なときに読んでほしい。
なお、メディアに対して福岡県警察は「警察官を警官と呼ぶのは蔑称だ」と反発しているが、当記事ではアメリカの警察官について、日本の警察官との区別をつけるため、また文化的慣例にしたがって、できるだけ「警官」と表記したい。アメリカの警察を語る場合は、やはり警察官より警官のほうが、しっくりくるためだ。なお、日本の警察官たちは自分たちを指す場合は警官と呼ばず、自嘲気味にサツカンと自称している。
アメリカの警官はドーナツが無料でもらえる?
いきなりドーナツの話で恐縮だが、映画を見ているとアメリカの警官はいつも制服姿でドーナツを食べているようなイメージがある。
アメリカの警官が持つポリスバッジ
現行の日本警察の警察手帳とアメリカの警官や各種法執行機関職員の持つ『ポリスバッジ』はどのように違うのか解説。
アメリカの警官の給料は高いの?
実はアメリカの警官の給料、意外な事実が判明した。
アメリカの警官の個人携行品について
米国警察ではけん銃、サブマシンガン、軍用カービンまで使用するが、警棒、テイザー、催涙ガスといった比較的安全な執行器具も配備している。
アメリカの警官の使用する銃器
米国警察のけん銃は80年代までは38口径のリボルバーが主流だったが、現在ではもはや完全に9ミリ口径のセミオート(自動式)が主流に。FBIの公式銃が9ミリから10ミリを経て、.40S&Wに至り、そして現在は何を使用しているのか興味深い記事だ。
特殊火器戦術部隊 What’s S.W.A.T?
アメリカの警察と言えば特殊火器戦術部隊、いわゆるSWATが有名だ。各州、各警察機関によってSWATの編成も多様だが、規模が大きく予算も潤沢な市警察本部では常設しているSWATが多いものの、大半の警察ではパトロール警官や刑事がSWATを兼務していることが多いようだ。
アメリカのポリスカー
アメリカでは各州警察、市警察、群警察、シェリフ、その他の法執行機関ごとに独自の車両を持つ。
アメリカの警察以外の法執行機関
FBIだけではない。実に多様な法執行機関が存在するのだ。