パトカーのメーカー別配備状況

日本のパトカー、すなわち警察車両。白黒のパトカーを正式な名称で呼ぶならば『無線警ら車』や『交通取締用四輪車』というお堅い名称だ。

また、覆面パトカーの場合も『交通取締用四輪車(反転警光灯)』や『機動捜査用車』、『警護車』などと各セクションで使用される種類ごとにさまざまな名で呼ばれる。

文字通り、街中を日々警らし、交通取締りを行い、休む間もなく運行されているこれら警察のパトカーだが、パトカーにはどのような車両が使われているのだろうか。

納入されるメーカーはさまざまで、大手自動車メーカーで警察に納入していないメーカーは無いだろう。中でもトヨタは地域警察向けのクラウン・パトロール、それに交通用クラウン交通覆面など数多くの車両を納入している。

それではメーカー別にパトカーをご紹介しよう。

トヨタ

クラウン

今更言うまでもないが、警らパトカーでクラウンが多い理由は警察庁が定めたパトカーとしての仕様書がナゼかクラウンありきであったことと、トヨタのみが現在パトカーの専用グレードを販売している事情があるためである。フロントグリル内部に秘匿型のLED前面警光灯を装備した210系クラウンの幹部車両が公開行事に登場するなど話題になっていたが、ついに2016年11月頃から警ら用パトカーにも独特の高級感を帯びた最新の210系クラウンが登場。

また交通機動隊や、高速隊などにおける交通取り締まり用の覆面での配備率も高い。

180系クラウン交通覆面。覆面の場合、ロイヤルサルーンのエンブレムがないが、専門誌やネットで指摘され始め、逆にエンブレムを付けるなど迷走していた。

現在国費で全国に配備されている交通用覆面パトカーは210系のクラウンアスリートだが、覆面の特徴は警察限定販売の非スパッタリング仕様のアルミホイール、それに市販車であれば5灯であるハイマウントストップランプが4灯に変更されている点、そのストップランプ部分のみ切り抜いた真っ黒いフルスモークなどが挙げられる。ただし、ストップランプについては市販車同様の5灯になっているものも存在するようだ。

一方で、捜査用覆面パトカーの場合、クラウンは耐用年数が過ぎてくたびれた交通覆面を下駄にする一部例外を除けば、ほぼ皆無。ただ、過去には少数の170系クラウンアスリートが警視庁刑事部で捜査指揮用車として配備されていた。これを劇用車として意外なほど忠実に描いていたのが、テレビドラマの「アンフェア」シリーズ。

『アンフェア』の覆面パトカー劇用車 170系クラウン アスリート

同作では主人公の雪平と相棒の安藤に捜査用車として17クラウンアスリートがあてがわれているが、無線用のTAアンテナ、さらにWIDE用と思われるTLアンテナも装備している。また、助手席サンバイザーのフラットビームや赤色灯のルーフ中央載せなど、思わずマニアが唸る正しい考証は現在のTBSの機捜216シリーズの劇用車に通じるものがある。

一方、交通取締り用の白黒および、交通覆面には新たに210系アスリートが採用され、全国で活躍している。

こちらは覆面仕様のアスリート。前から見れば異様に目立つグリルの中の前面赤色警光灯が見破りのサービスポイント。それに加え、後方からはハイマウントストップランプに見破りのヒントがサービスされており、市販車の6灯に対し警察車は4灯になるのも特徴。

追記 見破られたためか、近年配備される個体では市販車と同様の6灯の場合もある。


やはり警察ではクラウンでなければ威厳が保てない、ということではなく、用務に適さないということだろうか。今後もトヨタクラウンにだけなぜか有利な仕様書が入札条件で提示されるのだろうか。

クラウン・マジェスタ

本部長公用車として警察本部総務課に配備されている例が多い。

セルシオ

主に警視庁のセキュリティポリス(SP)や、警視庁以外の警護隊にて「警護車」として配備されているほか、幹部公用車としても使用。警護車仕様は防弾装備が施されており、ライフルの銃撃にも耐えうる性能を持つ。ただ、今後の警護車事情はレクサスになる予定で順次退役が進むとみられる。

アリオン

現在、ショカツの足として全国の刑事警察セクションに捜査車両として大量配備されているのが、このアリオンのA20グレード。小回りの利く軽快な小型セダンだ。一部の県警では近年、アリオンの白黒パトカーがついに導入されているが、グレードはやっぱり「売れないA20」。


交通覆面として使用されることも。

一時は多くのショカツでキザシに更新されちゃったけれど、キザシがあんなことになっちゃったから(!?)、2015年になると勢力が復活し、全国の捜査覆面にアリオンが返り咲き。


おまけに今度はA20に代わり、A18が大量配備されている。

マークII

宮崎県警がマークII グランデiR-V交通覆面パトカーの引退を報告

プリウス

冬に寒く、客待ちのタクシー運転手泣かせのプリウス。北海道では乗るべきではないプリウス。そんなエコカーの王様は白黒の警らパトカーとして全国の警察で配備されているほか、指揮用車(兼庁用車)という名目で納入されている。

また、ごく少数が捜査車両としても配備されている様子で、50系プリウスの捜査覆面が東京都内で目撃されている。

そもそも、覆面パトカーギョーカイにおいては、同じエコカーのホンダ・インサイトに圧倒的敗北をキメられてしまっているプリウス。だが、インサイトは製造中止になり、プリウスは現在3代目となり、好調な売れ行きは今なおケイゾク中。今後に期待か。

なお、ニューヨーク市警察でもプリウスのポリスカー(日本で言うところの警らパトカー)が配備されている。札幌やニューヨークの冬は寒い。アメリカの映画に登場する「プリウスの覆面パトカー」については別項でもご紹介中。

SAI

警視庁公安機動捜査隊警備部機動隊のエリア警戒車として、ハイブリッドカーのミドルオヤジ車・SAIの捜査覆面パトカーを新規採用。

機動隊のエリア警戒車の本来任務は警備部が受け持つ重要防護施設の巡視だが、右翼の街宣車の張り付き警戒もこなす働き者だ。


さすが警備部。

マークX

120系、また130系が捜査覆面/交取用覆面/白黒警ら用として各部門にすでに採用されている、捜査用は生活安全部のパパ活の捜査から、組織暴力の捜査まで対応するマルチ。

機動捜査隊では4WDを採用。道警機動捜査隊では主力の捜査車両15台のうち、8台がマークXだ。

さらに現在、日本警察史上最速の覆面パトカーとして話題になっているのが、ノーマルより42馬力アップさせた警視庁の特別仕様マークX+Mスーパーチャージャー。2017年時点で11台が警視庁交通部の交機および高速隊に配備されていると見られている。市販車両でもマークX+Mスーパーチャージャーのタマ数は多くないので、都内で出会えば、交通覆面の可能性が高い。

追記 リミッターの有無は不明だが、 警察本部によっては車種本来の性能を引き継いだまま、リミッターが搭載されずにパトカーとして配備されている例もある。 これについては以下のパトカーとリミッターの研究ページにて詳しく解説している。

パトカーはリミッターを解除されている?いない?

カムリ

2020年春、警視庁で70系カムリの交通覆面がお目見えした。どうやらこれは、先に紹介した130系マークX+M スーパーチャージャーの後継と目されているようだ。さらに2021年からは国費で捜査用覆面パトカーとして全国配備が開始された。

ラッシュ

宮城県警察は一風変わっている。同警察本部では覆面パトカーに「宮城県警察」と表記されたマグネットを車体側面に貼って運用するなど、通常の一般的な覆面パトカーとは違った運用をされる車両が存在。覆面ラッシュもその一つ。

キャバリエ


GMで製造され、トヨタが販売した外車。90年代、国費による覆面パトカーへの大量導入は今のキザシ同様、衝撃的だった。キャバリエは刑事ドラマ「ショカツ」にて田中美佐子扮する女性刑事の専用捜査車両として実物を忠実に再現していたことでマニアも変な汁出しながら大喜び。現在は絶滅に近い。まだ走っているならご愁傷様。

レクサス

レクサスもトヨタに含めちゃっていいよね?デ・ニーロも映画で『でもあれってトヨタだろ?』と言ってたし。セルシオの後釜となるべく、LS600hが警護車として活躍中。


一方で、警視庁のGS450hは警護車として導入されたはずだが、おそらくは組対でイレギュラー運用されているのではないかという一部指摘もある。

当該車両のグレードはGSシリーズ中で最上位の450h “F SPORT”とのことだ。組事務所前や組員宅前に佇んでいてもレクサスなら悪い人が好む車両なので違和感がなく、秘匿性も高い。TAアンテナがついてはいるが、ルーフに赤灯を露出させなければ、まさか警察車両とは近隣住民も思わないだろう。いや、近隣住民は知らされていたりして。それに警護車として防弾化されているなら頼もしいが、運用の詳細は不明。実はPOのお巡りさんが張り付き警護で使う場合もあったりして。

暴対版SPこと身辺警戒員(Protection・Officer=PO)とSPの違いとは?

こんなイレギュラーな運用もあるのが覆面パトカーのオモシロさなのだ。誰が胸のトキメキを抑えずにいられようか。

そしてさらに、2020年には寄贈パトカーとして栃木県警にレクサスLCが配備された。