女性警察官の役割と任用の歴史

世界的に見ると、およそ120年ほど前、近代警察が確立されたころに世界の警察組織では女性警察官の任用が進み、シカゴ市警察で1891年に世界初の女性警察官が誕生したとされている。

その後まもなくして、とくに西欧諸国で警察官への女性登用の動きが一段と加速し、イギリスやカナダなどで女性警察官の任用が始まる。

日本国内での女性警察官の誕生

我が国では現在の都道府県警察に一本化されるまで、それまでの国家地方警察とGHQが作った自治体警察という二つの警察機関が存在していたが、日本警察で女性がはじめて任用されるのは1945年、戦争が終わってGHQの統治が始まった翌年の1946年(昭和21年)からとなる。

産経新聞社によれば、大阪府警が全国に先駆けて1950(昭和25)年、婦人警察官へけん銃の射撃訓練およびけん銃携行を行ったという。

1950(昭和25)年6月18日、旧式けん銃の実弾射撃訓練を行う大阪府警の婦人警察官。引用元https://www.sankei.com/photo/daily/news/150618/dly1506180001-n1.html

とはいえ、昭和30年ごろまでは女性警察官の職域は広報や事務、案内など内勤職種に限定され、当初から刑事など第一線で活躍する職種に婦人警察官が配置されはしなかった。日本政府が主導して、女性は男性よりも劣った存在と決めつけ、男性よりも低い待遇などの格差をつけて女性を男性と平等に扱うことをしなかったからである。

そして、婦人警察官が最前線でようやく活躍できるようになったのは、1985年の男女雇用機会均等法の制定以降となる。さらに2000年には同法の全面改正で、ついに『婦人警察官(婦警)』という名称が廃止され、新たに『女性警察官』が公称となった。

それまでのミニパトに乗って駐車禁止を取り締まりる交通課員の『婦警さん』からイメージはがらりと変わり、今では地域課のハコヅメや交機の白バイ隊員、刑事や鑑識、SP、SITまで多様な部門において女性警察官が活躍し、路上ではヤマト運輸の配達員らとともにナイフを持った被疑者に果敢に立ち向かい、警棒でボコボコにする。

白バイ隊員に課せられている交通違反取締り以外の『秘密の任務』とは?

なお、女性警察官には男性警察官と重量が同等ではない軽量型の特殊警棒が貸与されているケースがあるので、以下のページにて解説した。

警察官の特殊警棒が2倍も太くなった理由とは?

また、女性が被害に遭う性犯罪などでは女性の捜査員のほうがスムースに対応できる。

機動隊の中にも女性だけの部隊が編成された例もあり、京都府警察ではダイヤモンド隊、北海道警察ではライラック隊という小隊が臨時編成されていた。

これまで自衛隊の特別警備隊といった正式な特殊部隊には女性隊員が就くことを防衛省が女性保護の観点から禁止してたが、特別警備隊は近年になって女性隊員の任用が解禁されている。また、航空自衛隊では2018年8月に戦闘機のパイロットとして女性隊員を任用した。警察ではどうか。警察には神奈川県警察捜査第一課特殊犯捜査係STSの最も危険な任務を帯びた突入要員に女性隊員がいるが、現状では特殊急襲部隊SATに女性警察官は入隊できないとされる。

県警本部長に初の女性警察官を起用

2013年には岩手県警察本部長に初の女性警察官が就任した。

女性警察官に銃は貸与されない?

日本警察の一部では女性警察官へけん銃を貸与してこなかった事実がある。神奈川県警の例では2009年4月まで、刑事以外の女性警察官には特殊警棒のみの貸与とし、けん銃は貸与していなかった。その理由は「女性警察官に銃を貸与すると犯人に奪われるリスクがある」というもの。

ただし、現在では原則、同県警の交通部や地域部に所属する主に制服の女性警察官には一人一丁ずつ、合計で730丁あまりのサクラなどのけん銃が貸与されている。一部の警察では女性警察官に対してけん銃を貸与する決断が遅かったのは事実のようだ。

一方で、正しくないけん銃使用も相次いだ。神奈川県警厚木署では女性警察官らがけん銃を使用したビデオシミュレーターによる疑似射撃訓練を行っていたところ、あらかじめけん銃から実弾を抜き取る手順を忘れ、実弾が入ったままのけん銃をテレビモニター内の敵に向けて『構え』を行い、そのまま引き金を引いて、見事テレビの息の根を止めてしまった。