我が国における水上・沿岸部における警察活動には、密入国、密輸、密漁などの犯罪の防止、水上交通秩序の維持、事故・災害時等における救助活動等が挙げられます。
これらの任務を遂行するため、全国でも沿岸部を有する警察本部においては水際治安の要として、水上警察隊が組織され、水上警察活動用に船舶を配備しています。
水上警察隊では港湾河川、湖における治安の維持を目的として警察独自の警らのほか、税関や出入国管理機関、海保等と連携した活動も実施されています。
なお、海の存在しない滋賀県警察でも、琵琶湖を有していることから水上警察隊が編成されています。
警察による密入国対策
とくに沿岸部における密入国や不審船、漂着物の警戒監視が重要で、海上保安庁とともに水際対策を講じています。
一例として、全国でも広大な沿岸部を有している北海道では枝幸署が約78㎞にもおよぶオホーツク沿岸部を管轄していますが、密入国監視は沿岸部に住む住民や旅館などの事業者との協力なくしては成り立たず、地域住民との信頼関係の醸成が重要と言えます。
警察が任命する密航監視協力員もそのひとつです。
密航監視協力員とは
密航者、不審船を監視、通報する協力体制を一般に広く敷くため、とくに中国や朝鮮半島と近い日本海側を管轄する取り締まり当局では、沿岸部で商売を営む漁師や旅館の女将など、一部住民を「密航監視協力員」として嘱託(ボランティア)で任命し、不審者、不審船の監視および沿岸警備の強化に努めています。
一見のどかで鄙びた海岸も、普段から住民によって密航監視の目が行き届いており、密行の疑いのある者が上陸および民間施設を利用しようものならば、すぐさま旅館の女将や屈強な漁師の兄貴たちから警察へと通報が届き、所轄署の地域課、警備課公安係のほか、公安外事の捜査員も駆けつける手はずとなっています。
警察の船舶
警察用船舶は、沿岸を管轄する警察署に配備されており、これらの警察船舶は水上のパトロールや密漁取り締まり、夏の海水浴場でも事故防止や救難活動に従事すしています。警察で使用される舟艇は海上保安庁と違い、大型船は配備されず、小型の警備艇運用が主流です。
またこれらの警備艇には固定武装はありませんる。
五輪へ向けて海上警戒部隊新設へ
2020年に東京で開催される五輪・パラリンピックに向け、そのテロ対策に警備当局はどう応えてゆくのでしょうか。
警視庁ではメインスタジアムの新国立競技場をはじめ、多くの競技会場や選手村を抱える東京都内で警備に従事しますが、臨海地区の警備対策として、新たに専従の警備部隊を新編します。
警視庁海上警戒部隊
警察庁の計画では2019年にも第6機動隊(品川区)の銃器対策部隊の一部を改編し『海上警戒部隊』を新設するとしています。各国の選手団や要人が訪れる空の玄関・羽田空港が海に囲まれているための対策と見られます。武装集団等が海上から空港へ接近するのを実力で阻止する重武装大隊と見られ、展開手段は警備艇のほか、機動性に優れた水上バイクなども配備される予定です。
すでに2018年の夏、東京港の晴海埠頭の競技会場や選手村、羽田空港近隣で警視庁などがテロ対策訓練を実施、公開しています。晴海埠頭付近では水上バスと新交通ゆりかもめなどの公共交通機関があり、テロリストへの警戒を厳にする狙いがあり、海上警戒部隊は晴海埠頭に設置する予定となっています。
なお、海上保安庁の活動について以下の記事でまとめています。