この記事では、本物の覆面からモドキまで「覆面パトカー」が関係した古今東西の事件をご紹介したい。
ある者は捜査車両で威嚇、ある者は捜査車両で速度違反、ある者は交通覆面モドキで威嚇……。実物の覆面パトカーからモドキまで、覆面パトカーをめぐるさまざまな事件が社会を震撼させた!
事件1、本職警察官による「おい、兄ちゃん、止まれ」事件
2001年11月18日に群馬県高崎市浜尻町付近で起きた事件。当時、無灯火状態で走行する自転車2台を同所付近で覆面パトカーに乗ってパトロールしていた高崎警察署の私服警察官3人が発見。助手席にいた巡査長がクルマを降り、2人に対して「おい、兄ちゃん」などと声を掛けた。
出典 https://response.jp/article/2004/11/19/65746.html
当時、警察官らは組員のような身なりをして高崎市の繁華街を公務で巡視していたという。
出典 https://response.jp/article/2002/03/12/15616.html
大学生らはこの警察官らが反社会勢力であると誤認し、身の危険を感じてそのまま止まらず逃げた。覆面パトカーは赤色灯を点灯させず、サイレンも鳴らさずにその後を追ったが、大学生の一人は直後に交通事故に遭い、帰らぬ人となった。
当時の追跡時における警察側の対応は覆面パトカーのサイレンを鳴らさない、警察手帳を提示せず警察官だと名乗らないなど、問題があったとされるが、検察は不起訴処分にした一方、当時追跡していた覆面パトカーの警察官は事故を目撃したにもかかわらず、大学生の救護措置を取らず、こちらも現場から即逃走。その後「事故を見ていない」とする虚偽の報告を上げたことが虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われ、前橋地裁に起訴された。一方、民事裁判では遺族に警察(県)側が5000万円払うことで和解している。
覆面パトカーに乗る本職の警察官が、本職の反社会勢力に間違われるとは何ともやるせない事件だが、当時、警察官が乗っていた覆面パトカーの車種は不明。ただ、当時のいわゆるVIPカーのトレンドでは、リアウインドウにフルスモーク、トランクリッドにTLアンテナを立てるドレスアップがセドリックなどで流行っており、ワックスで磨き上げられたこれらのVIPカーは、当時の交通覆面にそっくりであった。結果的にどっちの本職の車にも見えることがしばしばで、善良な市民には迷惑だった。
上述の事情を踏まえると、キムチと焼肉で体を大きくして柔道で耳の潰れた大男(しかも本職のような身なり)に「おい、兄ちゃん。止まれ」なんて赤色灯なしで声をかけられたら、被害者の大学生でなくとも、誰でも『ヤッ…ヤクザ!?』と驚愕して全力で逃げるのもやむ無し。
思わず二度見するドチャクソかっこいいD.A.D(ギャルソン)ステッカー・チューンを施した捜査覆面パトカーがSNSや5ちゃんねるで話題
事件2、自家用車を偽覆面にして通勤中に一般人を威嚇した本職警察官
2012年、愛知県警察運転免許課に勤務する現職の巡査部長が自家用車のアメリカ製SUVを覆面パトカー仕様にして、通勤中勝手に交通取締りを行っていたという、不可解な事件が起きた。巡査部長の車に取り付けられたのは海外の警察で一般的な「赤と青のLEDライト」さらに「警察車両と似たサイレン」であった。巡査部長はそれらを違法に使用して他車両を無理やり停車させる事件を起こした。
被害者の男性運転手は「変な車に無理やり止められて威嚇された。警察だと名乗っている」とその場で110番通報。その後、元・巡査部長は脅迫で逮捕され、同宅を捜索したところ実銃が見つかった。
元・巡査部長は脅迫や銃刀法違反(加重所持)などの罪に問われ、名古屋地裁の判決では「現職の警察官であったにもかかわらず著しく規範意識に欠けており、強い非難を免れない」と看破され、懲役4年6月(求刑懲役6年)の実刑を言い渡されている。
高速道路上で並走する車の運転手を拳銃型の催涙スプレーで脅したなどして、脅迫や銃刀法違反(加重所持)などの罪に問われた愛知県警運転免許課の元巡査部長、遠藤孝被告(50)=懲戒免職=の判決公判が1日、名古屋地裁であり、後藤真知子裁判長は懲役4年6月(求刑懲役6年)の実刑を言い渡した。後藤裁判長は判決理由で、「危険性は非常に高く、悪質」と指摘。「現職の警察官であったにもかかわらず著しく規範意識に欠けており、強い非難を免れない」と述べた。判決によると、遠藤被告は昨年7月、名古屋市内で運転していた車から並走する男性に、拳銃型のスプレーを向けて脅迫。また2007年に赴任先だったフランスから回転弾倉式拳銃1丁を持ち込み、弾丸といっしょに自家用車に保管するなどした。
出典 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0104G_S3A300C1CC0000/
その後懲戒免職となった元・巡査部長は偽札まで作っていた事も判明し、再逮捕されている。
一万円札を偽造したとして、愛知県警捜査2課などは21日、元同県警交通部運転免許課の巡査部長、遠藤孝被告(50)=脅迫や銃刀法違反などの罪で公判中=を通貨偽造の疑いで再逮捕した。
出典 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2104U_R21C12A1CC1000/
なお、偽札は不起訴となり不問となっている。
いずれにせよ、巡査部長の詳しいキャリアは報じられていないものの、実は2007年にフランスの日本大使館へ出向しており、成績優秀で上司の信頼も厚いエリート選抜者であった。とはいえ、ノンキャリアの警察官でも海外公館勤務への登用はポピュラーだが、単なる『ご褒美人事』であり、元部長が特別に優秀だから海外勤務者に抜擢された、とは限らないのかも知れない。警視庁がよくやるという小笠原諸島へのご褒美配置転換と同様に、はじめから特定のミッションをクリアした警察官への褒美として県警に枠があるのだろう。
しかし、ご褒美をもらえた理由についても不明だ。それにしても警察官として謎の資質を持つ被告。いくら高度経済成長期のインチキ採用であっても、どういう経緯で警察官を拝命できたのか、振るい落とせなかったのか、偽札の件が不起訴になった理由など、疑問が残る。親が有力者など、いろいろな仮説が立てられるだろう。
また、運転免許センターへの配置換えは必ずしも左遷ではなく、要職であれば、事実上の栄転となる。ともかく、元・巡査部長は県警の交通セクションに勤務する警察官なのだから交通法規のプロ。法律の抜けアナを知っていた可能性も考えられないだろうか。
いずれにせよ、警察官が偽覆面に乗って、なおかつ煽り運転を行うとは珍しい事例である。被害者がドラレコ装着車だったら良い絵が撮れただろう。
情報出典元 『脅迫に偽札 とんでもない警察官の犯罪まとめ』
http://matome.naver.jp/odai/2135354100972806301
車に銃所持容疑で警官を再逮捕
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2601M_W2A720C1CC0000/
事件3、本物の覆面パトカーが緊急走行で速度違反をして検挙される
2014年6月、なんと緊急走行中の覆面パトカーが速度違反で摘発されるという信じがたい事案が起きた。速度違反をしたのは岡山県警察の笠岡警察署交通課の交通用覆面パトカー。
運転していたのは30代の巡査長で、岡山市内の裁判所へ交通事件の逮捕状を取りに行くため山陽自動車道を140キロで緊急走行中だった。この猛スピードで走る覆面パトカーをパシャリと撮影したのは自動速度取締装置。あえなく、巡査長は速度超過で書類送検となった。
実は緊急走行のパトカーと言えど、すべての事案において”速度超過”が許されているわけではない。高速道路で速度超過が認められるのは交通違反の取り締まりおよび凶悪な被疑者の追跡のみ。今回のように「裁判所へ逮捕状を請求しに行く」という目的では、さすがに140キロの緊急走行はお目こぼしされなかったようだ。
情報典拠元
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20140703-1328015.html