捜査用覆面パトカーの役割と運用

覆面パトカーは大別すると、刑事部や生活安全部に所属している私服勤務者が乗る捜査用覆面パトカー、そして、もっぱら交通部の制服警察官が乗車して交通違反取締りに使用される交通取締り用覆面パトカーの2種がある。交通用覆面パトカーの特徴については前回お伝えしたとおりだ。

交通取締用覆面パトカーの特徴と装備品

この記事では捜査用覆面パトカーについて解説したい。

交通覆面は国費による配備で、ほぼ全国的にセダン型だが、捜査用覆面では国費でもセダン型のほか、ハッチバック型、ステーションワゴン型など車種が実に豊富。さらには軽自動車までも採用されている。だから面白くて、なんだか胸のときめきが止まらないのが捜査覆面なのである。

画像は捜査用覆面パトカーのトヨタ・アリオン。おばさん向けの何気ない中型セダンも、各種装備品の架装を施せばとたんに怪しさ一杯の魅惑的な警察車両になる。

ドラマでもおなじみの機動捜査隊に配備される『機動捜査用車』では、もっぱらインプレッサアネシス、レガシィ、スカイラインなどの中型、大型のスポーツセダンが多かった。

機動捜査隊に配備される機動捜査用車と搭載装備品とは?

現在、北海道警察本部刑事部機動捜査隊では主力車両のほぼすべてがマークXだ。

一方、署轄ではアリオン、キザシ、ティアナなど幅広く増えている様子だ。

Nissan_Skyline_Sedan_V36_in_2010

エコカーの覆面ではホンダのインサイトが大量配備中。トヨタのプリウスも少数ながら捜査車両として配備が確認済みだ。

覆面プリウスは存在するのか

そしてスズキからは近年配備された伝説のキザシ。

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捜査用覆面パトカー……その特徴は着脱式警光灯であること

捜査用覆面の最大の特徴と言えるのがマグネット・タイプの着脱式警光灯だ。

緊急走行の際は乗員が自分の手で直接ルーフに載せるのが、交通用覆面の反転式赤色灯とは異なる。

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刑事課は交通違反の取り締まりに従事しない

ところで、捜査用の覆面が交通取り締まりを行うことはあるのだろうか。基本的に、刑事事件の捜査をする機動捜査隊や刑事課などの警察官は、交通違反の取り締まりに従事していない。

機動捜査隊などは信号無視や一方通行を逆走などをした車がいた場合、事件などにかかわっている犯人が乗っている場合が多く、その場で現行犯逮捕して身柄を拘束したいときは信号無視などをした時間を記録し、交通課や地域課員、自動車警ら隊などに応援要請をして臨場してもらっている。

交通課員が捜査覆面で交通取り締まりを行うイレギュラー運用はあり得る

一方、めったに見られない光景ではあるが、外見が捜査用の覆面であっても、中身が交通警察官なら交通取り締まりを行う場合もある。所轄の刑事・生活安全系の捜査覆面が交通課の交通取締りパトカーとして一時的にレンタルされているのだ。

例えば東京都内では捜査用のアリオンに交通課の警察官が青服で乗り込んで駐車禁止エリアの取り締まりを行っているほか、ある県警ではスイフト覆面で一時停止違反やシートベルト取り締まりを行っていることがTwitterで報告されている。

2018年、警視庁が行った大規模な交通取り締まりではなんとあのキザシも交通覆面として投入されているのだ。

画像出典 テレビ朝日のニュース報道

ただし、捜査用の覆面パトカーにはストップメーターが搭載されておらず、速度違反の取り締まりには対応していない。

どんな車が捜査用覆面パトカーとして採用されるのか

基本的に警察庁では車両の購入を入札で決めており、ある程度の仕様は指定しても、具体的な車名までを指定しない。だからキザシのような例も起きるのだ。

メーカーが覆面の入札に投入してくるのは売れない車かつ、最低グレードの廉価なモデルが多い。

近年、ハッチバックに押され、セダン人気が一般市場で下落し、販売不振が続く中で、メーカーはセダンの生き残りに頭を悩ませている。警察が大量にセダンを採用してくれれば在庫も捌ける。

ただし、当局側はセダンだけではさすがに捜査に支障をきたすと考えたのか、近年では私服用ハッチバック型無線車という名目でスイフト、フィット、SX4、ジュークといった車種も捜査用覆面では増加傾向にある。フィットは市場でも人気で、売れない車が覆面に……という法則は崩れてきてもいる。

そのほかにも、エルグランド、アルファード、セレナ、ステップワゴンなどワゴンやミニバンも覆面として採用されている。

また、警察車両の購入は国が一括で購入し都道府県に配給する国費モノと都道府県が独自に購入する県費モノ、さらに購入ではないパトカーとして『寄贈モノ』もあるため、県によっては捜査覆面も様々な顔ぶれになる。

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