諸外国には日本のジョーシキからは想像もつかない度肝抜かれる警察車両が存在する。
とくに米国では「半分だけ正体を露見させた”ステルス”覆面パトカー」のほか、日本警察では市民感情の悪化を恐れて配備が憚られる「ほかの業種の車両に偽装させた覆面パトカー」もいる。
なかでも、ニューヨーク市警察が運用するこの車両は驚きだ。
NYPD「タクシースクワッド」に配備されるタクシー偽装型覆面パトカー
ニューヨーク市警(NYPD)から全米でも珍しいご当地覆面パトカーの運用をご紹介しよう。
NYPDには街頭犯罪を取り締まるスペシャル・チーム「TAXI Squad(タクシースクワッド)」が編成されている。
配備される車両は一見普通のいわゆるイエローキャブ。屋根には日本のタクシーも載せているお馴染みの”アンドン”もあり、アメリカのタクシーの風体そのものだ。
実はこれ、タクシーを装ったニューヨーク市警(NYPD)所属の警察車両で、偽イエローキャブなのだ。日本風に言うならば、一般乗用旅客自動車概態警ら車とでも呼ぶべきか。
乗務している市警の警官2名のうち、一人は後部座席の客を演じつつ、通常はタクシーとして街を警らすると云うから、その業務は日本警察の機動捜査隊の密行じみたモノと考えていいだろう。
ひとたび事件が発生すれば、”タクシー覆面”も緊急走行にて現場へ向かうのだが、その際は当然、前面グリル内に隠された赤色のエマージェンシーライトのほか、リアのナンバー両サイドに搭載したホワイトのフラッシュLEDを点滅させたうえでサイレンを吹鳴させる。その実際の緊急走行動画がこちらだ。
外見の特徴はやはりリアのトランクドアに設置された10センチ前後の警察無線用アンテナだろうか。前を走るパトカーのトランクドアに留意してみると、似たアンテナが搭載されているのがわかるはずだ。並みのイエローキャブにはこんなアンテナはついていない。
そしてナンバーも2Wと6Yから始まるのが特徴的。さらに車内には通常あるはずのアクリル製の防犯板がない代わりに、パトカー専用の照会用端末(日本のPATシステムに相当)が搭載されている。
こんな覆面タクシーが、パトカーと一緒に連なって緊急走行している様はやはり異様だが、先進的で奇抜なアイデアを警察活動に投入してくるのはさすがアメリカ。
街頭犯罪抑止に役立っているのかどうかデータとしては不明だが、何千台も走っているタクシーの中の数台が警察車両かもしれないという事実は、路上を徘徊するひったくりやぼったくりに威圧感を与えるであろうことは確かのはず。
おまけ パトカーとタクシーのコラボ
さらに米国のいくつかの警察ではタクシーとパトカーのハイブリッド車両を飲酒運転抑止キャンペーン用として投入している。
この警察車両の特徴は前半分がパトカーの塗装でPOLICEのマーキング、そして後ろ半分がイエローキャブの塗りでTAXIのマーキングになっているところだ。
典拠を示した写真はセンテニアルレイクス警察の運用する車両の一例。車体サイドには「Choose Your Ride」というスローガンも。直訳するなら「どっちに乗るか選んでね」というこの標語は、言うまでも無く「パトカーで留置場行きか、タクシーで自宅か」を示唆しており、飲酒運転を実行しようとするドライバーたちへの背筋凍る警告となっている。「お前、飲む。お前、運転する。お前、失う」のスローガンもツボ。
こちらの車輌は上述のイエローキャブ型覆面パトカーと違って、実際の取り締まりには投入されず、あくまでも飲酒運転防止キャンペーンにおける広報啓発用の警察車両だ。
そのうちどこかの飲酒運転大国・北海王国警察も真似しそう。