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首都東京の都心を行く黒塗りの車列。車列のほぼ中央を走る内閣総理大臣専用車。その前後の護りを固めるべく随行する何台ものレクサスやセルシオは警視庁のエスコートカー(EC)、いわゆる警護車である。
警護車は赤色回転灯を起立させサイレンを鳴らすと、後部座席からはスーツに白手袋姿のSPが身を乗り出して周囲の一般車両を威嚇するように交通統制を開始する……。
これが東京の日常、内閣総理大臣の移動に伴うSPらの警護と警護車のヒトマクだ。
もっぱらパトロールを行わないので”覆面パトカー”ではないが、外見上はいわゆる覆面パトカーと似た雰囲気を醸し出す、この警護車。一体どんな警察車両で、どんな装備が積み込まれているのかご紹介していこう。
警護車とはその名の通り、政界の重鎮などを警護するSP(セキュリティポリス)たちが警護のために使用する特殊な警察車両だ。
外見こそ一般車に偽装した覆面パトカーと大きく変わらないが、選定される車種は高級車が主で、スカイライン、セルシオ、クラウンマジェスタ、センチュリーなど国産の錚々たるものばかり。
SP(セキュリティポリス)のいない他の道府県警察本部でも警護車は配備されており、日産ティアナ、ホンダのレジェンドや三菱のデボネアなどもある。さらに外国車ではベンツも配備されている。
当然、警護車は黒塗りでワックスの塗りもカンペキ。
安倍元首相の国葬警備にて岸田首相担当SPが現場責任者の警察官に指示を出したら『うるさい、黙れ!口出すな!』と罵倒されてしまう動画が炎上!
警護車を操縦する警護員の技術
神奈川県警察警備部警護車両
V35スカイライン覆面パトカー pic.twitter.com/2xVkuN5LTn— 京浜さんの写真館 (@KHPCphoto) 2016年12月28日
当然、それを運転するSPの技術も相当高い。クルマの操縦訓練ではパイロンスラロームを華麗なハンドルさばきで切り抜け、その傍らでは女性警護員が銃撃音に対する反射神経を磨くためのシミュレーションを行う。
内閣総理大臣専用車がトヨタ製のセンチュリーであることから、警護車も統一性を持たせるためトヨタ製が主だっていたが、昨今の警視庁の警護車にはスバルのBMレガシィが配備されている。
内閣総理大臣専用車とは?
総理大臣の移動に使用されている公用車、その名も内閣総理大臣専用車。
内閣府が所有する本車両はこれまでトヨタ社のセンチュリーのみであったが、2008年からはレクサスLS600hLが並行配備されており、現総理である安倍首相の移動には上記のいずれかを使用している。
内閣総理大臣専用車は総理大臣の公務のみならず私的使用することも認められている。当然、防弾鋼、防弾ガラスを装備した特別仕様である。
センチュリーには前面青色灯が装備されているが、レクサスではグリル内に搭載され、さらに後方威嚇用にも後部バンパーに埋め込みされているようだ。
助手席にはSPキャップが乗車するが、通常、運転は警察官ではなく、内閣府職員の技官が行う。
なお、この総理大臣専用レクサスは2013年に安倍首相を乗せた状態で、東京都渋谷区の首都高速新宿線の代々木入り口付近において、前後を警護していた警護車と玉突き衝突している。
警護車の主な装備
警護車の装備をそれぞれの装備ごとに解説していこう。
複数系統の警察無線を送受信するアンテナ
警護車が覆面を被って自身の正体を秘匿している状態でも目立つ装備といえば、やはり後部のデジタル警察無線用アンテナだ。
警護車には車載通信系や警備部機動隊向けの部隊活動系や携帯通信系など、複数系統の警察無線を送受信する必要性から、多数のアンテナ設置が必要だ。
デジタル警察無線には複数の系統があるって警察無線解説記事で分かったけど、なんで警護車両のSPって複数の無線を聞かなきゃなんないの?それはね、基幹系で管内の犯罪発生状況を素早く知り、警備部機動隊向けの部隊活動系で男の絆を深め合い、WIDEで幹部同士が飲み会の予定を打ち合わせるためさ。なんでウソつくの?
警護車ではこれまで主流であったTLアンテナが今なお標準で装備されている一方で、警護イベント毎にアンテナを増設するため、着脱の容易なユーロアンテナ偽装型アンテナ『MG-UV-TP』が好まれている。
警護車の赤色灯は反転式。ただし幹部車両は着脱式
警護車の場合、赤色灯は着脱式ではなく、交通取締用覆面と同じく自動起立式のいわゆる反転式赤色灯だ。
ただし、幹部仕様車の場合は着脱式になる。
これは刑事部の捜査用覆面パトカーではなく、皇族警衛SP専用のトヨタ・クラウン。
(アマゾンが販売する青島文化教材社の製品写真)
ナビミラー
警察車両の化石装備!ナビミラーが現役!警護車の助手席には補助ミラーが増設されている。
ナビミラーも特徴的だ。これで助手席側乗のSPがチラチラと後ろを警戒し、ユーチューバーなどの追従を見張るのだ。
防弾施工
そして最も特別な装備はやはり「車両の防弾施工」であろう。警察車両の中でも一部にしか施されていない防弾用の装甲板、窓だって当然、厚み数センチの防弾ガラスに換装済みだ。
警護車専用サイレンアンプ
警護車は株式会社パトライト製品の覆面パトカー用のアンプ『SAP-500BM』を搭載せず、専用の警護車/警衛車向けサイレンアンプ『SAP-500BP』を搭載している。
にんじん
また、乗車するSP(セキュリティポリス)が振り回す”ニンジン”と呼ばれる赤色の誘導灯(北海道警察が”スター棒”と呼ぶアレ)が積まれており、とっさの交通統制を行う場合はポマードで髪を固めたSPが白手袋でニンジン片手にヤンチャ臭くハコノリで身を乗り出し、一般車両や歩行者を威嚇威圧ッ!
遊撃警護車
一方、セダン型の警護車とは別に「遊撃警護車」なる車両もある。こちらはトヨタ・ランドクルーザーなどの大型四駆でセダン型警護車同様に黒塗りかつ、反転式警光灯などを搭載している。
遊撃警護車のもっぱらの役目は無職が富良野で天皇陛下の御料車に対してやったように、内閣総理大臣専用車が牛みたいに突撃された場合、その巨体を活かして”壁”となるほか、実力で排除するための”ハンマー”となることだ。こちらもレクサスとともに警護の車列に随行する場面が多い。
このように状況によっては警護車を使って一般人を実力で排除することも当然想定されるだろう。当然、止むを得ない理由があるのなら、警察官が故意にクルマをぶつけても違法性は阻却されるだろう。知らんが。
首相に近づくミニバイク……そのとき、SPが免許センター覚悟のドア攻撃でタンゴダウン!
ミニバイクの男性が、当時の小泉総理の乗った公用車を追い抜こうとしたところ、後方で警護していた警護車のSP(セキュリティポリス)が、バイクを阻止しようと警護車のドアを開けて転倒させたこともある。
警察では緊急の必要性があったので、SP(セキュリティポリス)の行為は法律上の緊急避難であり、違法性はないとしているが、不用意に総理大臣公用車の車列の横をすり抜けようとしたり、追いかければ、地雷震みたいにグロックの所持を許されたSPたちに制圧される可能性が高い。
グロックを使わずとも、セルシオの防弾ドアを目前でわざと開けられれば、ミニバイクなどひとたまりもない。幸いなことにヘルメットを被っていたミニバイクの男性はケガだけで済んだ。
しかし、警察からは謝罪どころか「警察官がドアを開けた行為は刑法上の緊急避難でやむを得ず、違法性は阻却されると解される。ダンナさんの前方不注意だからおたくさんのほうに過失がある。アンタの運が悪かったと思ってあきらめて。裁判やっても無駄だよ」……と言われたかどうかは筆者の知るところではないが、とにかく指導を受けたという。
ミニバイクの男性が意図した行為なのかは不明だが、このような総理大臣の車列に不用意、 あるいは動画投稿目的で近づけば、最悪の場合、実力行使で排除される可能性もあると言えそうだ。