警察の鑑識と科捜研とは動かぬ証拠を採取し、裁判で警察を栄光の勝利へと導くスペシャリスト集団

都道府県警察本部刑事部のほか、所轄警察署刑事課の中に置かれている鑑識課および鑑識係は事件の物証を採取し、科学的検証などを行う部署だ。

すなわち鑑識とは事件捜査を足元から支える根幹である。

警察の中には各種の検定がある。例えば、けん銃操法。パトカーの運転資格。

鑑識にもやはり技能検定があり、足跡、写真、科学、総合などそれぞれの区分と級があり、刑事部長を筆頭とする検定審査委員会で厳格な試験が行われている。

実は、警察学校での教育にて全ての警察官が初級を取得しており、全警察官は鑑識の基礎知識を持っている。

鑑識の役割は主に三つ

1、現場鑑識活動

ひとたび事件が発生したならば、鑑識専用のワンボックス型緊急車両が、緊急走行で捜査用覆面パトカーとともに現場へ駆けつけ、被疑者が残した指紋や足跡(ゲソ)、体液などを迅速に採取すべく採証活動を行う。

日本における犯罪現場での指紋、血液、足跡採取、写真撮影といった鑑識活動は、明治44年から警視庁が採用しているが、現代ではハイテクと科学捜査による採証活動こそが裁判で警察を勝利に導く術である。

鑑識課員のそのすべてが警察学校で高い知識を習得しており、プロ意識が高い。

鑑識課員が着用している制服は「現場鑑識活動服」と呼ばれる被服で、都道府県ごとにデザインが異なるが、一般的には濃紺やライトブルー系の作業服然とした上下に活動帽スタイルが定番となっている。

鑑識によるさまざまな鑑定方法

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鑑識では主に以下のような各種採証活動を行う。

DNA鑑定

DNA(デオキシリボ核酸かくさん:DeoxyriboNucleic Acid)は、生物の身体を構成している細胞中の核の部分に存在し、人間の体を作り上げる物質である。DNAは一人ひとりで違い、DNA鑑定とは、このような個人が持つ個体差を鑑定して個人を特定する手法である。

どのような遺留物から身元がわかるのか?

DNA鑑定が可能な人間の遺留物は血液、消化液、唾液、涙、汗、嘔吐物、膿汁などの体液、そして毛髪がある。現在の科学捜査ではDNA鑑定が重要視されており、犯人が事件現場に残した遺留物からDNA情報を割り出して過去のデータベースと照合する。また、被疑者や事件関係者から口内粘膜の任意提出を受け、DNA照合を行う。

しかし、髪の毛の場合、単に自然に抜け落ちた髪の毛なら、毛根がないために鑑定は困難だ。

一方、昔から空き巣の中には、忍び込んだ家の茶の間に排泄をしていく者がいる。その理由は「まじない」や「ウンがつくという縁起担ぎ」とか「金目のものが無かった腹いせ」など複数ある。

犯人が置いていったブツからも、DNAを検出することは法医学の観点からは可能だ。ただし、法医学の観点から、排せつ物は理想的な証拠物とは言えない。

排せつ物には人間の腸内粘膜の破片が付着しているので、理論上、個人を判別する手がかりとなるDNAの採取と検出は可能とされているものの、お味噌の鮮度が良い場合に限られるうえ、細菌が多数含まれており、DNAはこれらの細菌により損傷するため、時間が経てば検出が困難になる。

2014年12月、群馬県前橋市の住宅に押し入って老夫婦の命を奪った土屋和也死刑囚は犯行現場の住宅でリンゴを食し、その食べかけを現場に残した結果、唾液からDNAが採取され、動かぬ証拠となった。このように、被疑者の遺留物が現場に残存している場合が多いので、万が一、自宅や会社などで事件があった場合、事件現場はそのままに速やかに110番することが求められている。

筆跡鑑定

近年では「黒子のバスケ(黒バス)作者脅迫事件」が世間を騒がせた。犯人は当初、インターネット掲示板において作者への脅迫を行っていたが、エスカレートしてリアルに脅迫状を出しまくった挙句、今度は毒を混入させた菓子の写真などまでを送りつける悪質な脅迫を行った。このような脅迫が繰り返され、同作品のイベントやキャンペーンが中止になり、さまざまな企業の業務を妨害した。

このような事件での脅迫状は、犯人が手書きで送りつけてきた場合、個人を特定する大きな証拠となるのが筆跡だ。誘拐事件や、中学校でしばしば起きる体育祭や中間テスト、始業式などの直前に起きる謎の爆破予告事件でも、犯人が学校に脅迫状を送ってくることもあり、生徒や関係者から任意で提供された筆跡の鑑定を行っているのが実情だ。

足跡鑑定

0-65空き巣被害などでは、住居の内外に犯人の足跡(ゲソコンとも呼ぶ)が残されている場合が多い。ゲソコン鑑定には重合法、指摘法などといった多様な鑑定法が使われる。靴のメーカーやサイズはもちろんのこと、靴に付着した泥などの残留物も含めて鑑定が行われる。足跡からは身長や歩幅、実にさまざまな犯人の特徴が割り出せる。

このような鑑定にはニコンの大型マクロ写真装置などのほか、ハイテクコンピューターといった鑑識機材が使用される。

2、遺体の身元確認の照会業務

身元不明遺体の似顔絵を描くなどのほか、身元不明遺体に関する事務一般も鑑識課員の業務となる。

3、警察犬の扱い

警察犬による捜索も鑑識課員が従事する。

警察犬は犯罪捜査や災害救助、爆発物捜索でも活躍する!警察犬の概要と捜査手法とは?警察犬には警察直属の犬と民間嘱託の二種がいた!

鑑識と密接な科学捜査研究所と科学警察研究所

日本の警察には科学的な捜査研究機関として以下の二つの機関がある。科学捜査研究所(科捜研)は全国の都道府県警察本部に付属する機関で、高度な科学技術を以て鑑定を行い、鑑識と共同で事件解決に従事する。例えば、事件現場に残された血液などの鑑定、毒物や薬物の鑑定も行う。また、銃器の鑑定では発射された弾丸の線上痕などを調べる。

一方、国の機関である警察庁の付属機関として科学警察研究所(科警研)がある。科警研はもっぱら、科学捜査に関する政策や手法の企画立案を行うが、鑑定も行っている。