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検察官は検事とも呼ばれ、一般的な事件のみならず、大掛かりな組織的贈収賄などの事件や、政治家に対する捜査などでも活躍し、裁判で厳しく被告を追及する姿はよく知られている。
検察は訴追機関と捜査機関の役割を併せ持つ
検察と警察は同じく『捜査機関』であり、検察官は法務省の特別の機関である検察庁職員(国家公務員)である。検察は警察の捜査が不十分だと感じた場合、警察を指揮し、また自らも捜査を行うこと(補充捜査という)ができ、司法制度上は実質的に警察よりも上位となる。
通常、事件の捜査は都道府県警察が一義的に行うが、警察官は被疑者を逮捕しても起訴ができず、48時間以内に被疑者を検察官に送致しなければならない。検察はそれらの事件を起訴するか不起訴にするかの第二の捜査を行う。
検察が行う捜査は関係者の取り調べから始まり、証拠品の捜索や差し押さえ、事件の被害者に事情聴取などといった警察の第一次的捜査と変わらない。
検察官はこのように警察から上がってきた各種事件をあらうだけが仕事ではない。検察は被疑者が犯罪を犯したことが明確な場合、裁判所に対して起訴状を提出し、起訴を行うのだ。検察とは捜査機関の役割だけでなく、訴追機関としても併せ持つためだ。刑事事件については公訴を提起し、遂行する権限を検察官が持っている。
検察官には身分証明書がない?身の証は『秋霜烈日』のバッジで立てる
検察官は捜査官でありながら、法を執行するにあたって掲示する公的身分証(例えば警察手帳のような)がない。
それに代わるものとして検察官がエリにつけるのが『秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)』のバッジとも呼ばれる検察官記章だ。
紅色の旭日に菊の白い花弁と金色の葉をあしらったこのバッジは、昭和25年に制定されたものだが、菊の白い花弁が秋の霜、そして紅色の旭日が夏の烈火にも見えることから、検察官に課せられた厳しい使命にも通ずるとして、そう呼ばれている。
ただし、デザインを担当した元検事総長によれば、あくまでそれらを意図したデザインではなく、後付けの理由だという。
なお、検察官は単独での捜査を行わず、捜査の場合は必ず検察事務官を随行させ、覆面パトカーの運転など雑務を検察事務官に任せている。
そして捜査上、相手に身分を明かす必要があれば、お付きの検察事務官が自らの「検察事務官証票」という身分証を提示してから『そして、こちらは検事の……』と、エリ元で『秋霜烈日』のバッジが鈍く光る検察官の身分も明かすのだ。この水戸黄門のように身分を明かす流れも検察官ならではの様式美と言えそうだ。なお、検察事務官のバッジ『検察事務官記章』は桐の紋をあしらった桐花紋章とも呼ばれ、それ自体に小さな文字で『検察』と明記されているのが特徴だ。
ただし、前田恒彦元特捜部主任検事によれば、懲戒免職であれ任意の依願退官であれ、検事を辞めるに際し、必ず検察庁に返還するものとして、(1)求刑基準(検察庁独自の極秘資料ファイル)、(2)検事バッジ、(3)身分証としている。
テレビでおなじみの特捜部、どんなところ?
検察の中でも最強の捜査部門と呼ばれるのが、東京、大阪、名古屋の各地検に設置された特捜部だ。役所や大企業との収賄事件などにおいて活躍する、検察の特捜部とはどのようなセクションであろうか。
特捜部は国税庁、公正取引き委員会、証券取引き等監視委員会など、強制調査はできるものの、司法警察権を持たない機関から告発を受けた事件の捜査を担当する。例えば国税庁から告発される巨額の脱税事件。またいわゆる公務員と民間企業との贈収賄事件なども捜査する。
覆面パトカーはあるが銃はない検察庁
いわゆる一次捜査を行うのは警察であり、検察は「パトロール」つまり街頭犯罪防止活動を行わない。しかし、検察にも捜査活動を行うための”覆面パトカー”は配備されている。
これは正式名称を『検察庁車』と呼び、検察庁において使用する自動車のうち、犯罪の捜査に使用する車両だ。犯罪捜査に必要な特種な設備、さらに保安基準第49条の規定に適合する警光灯(格納式および着脱式のものを除く)およびサイレンを有している。
一方で検察官には小型武器、つまりけん銃の貸与は認められていない。その理由は検察官が捜査に出向く場面は限られたものであり、また警察官に比べると、凶悪な被疑者と対峙するような危険な場面には遭遇しえないことなどが理由として挙げられるだろう。ただ、特殊警棒といった限定的な武器であれば、被告人を裁判所に強制出廷させる『勾引』などの際、検察事務官が携行する。
検察官の事務的な補佐をする検察事務官
検察には検察官のほか、検察事務官と呼ばれる事務方もいる。警察にも警察官とは別枠採用の警察事務職員がいるが、検察事務官は検察官の補佐として司法警察権を持ち、捜査に関する権限が与えられているため、一般的な事務職のイメージとは大きく異なる。
大がかりな贈収賄事件の報道で、段ボールで押収した資料を運んでるスーツ姿の人たちが映ることがあるが、彼らこそが検事の命令の下で動く検察事務官だ。覆面パトカーの運転から押収資料運び、検察官の命令により特殊警棒を持たされて、被疑者の自宅へ行って逮捕をしに行ったり、逃げそうな被告、証人などを裁判に強制的に出廷させるための『勾引』をおこなうこともある。
野々村元県議や、砂川飲酒ひき逃げ事件の証人として呼ばれていた上砂川町の男性などは裁判当日に出廷せず、バックレそうだったので、裁判所が勾引命令を出して勾引をされたうえで強制的に出廷させられている。
検察事務官は捜査公判部門、検務部門、事務局部門間の異動を繰り返して昇進していく。捜査公判部門においては主任捜査官、統括捜査官、首席捜査官へと昇進ができる。また検務部門では検務専門官、統括検務官、検務監理官へ昇進ができる。さらに事務局部門では係長、課長、事務局長などへ昇進できる。
罰金の徴収事務は検察が行っている
交通違反の反則金の徴収を行うのは警察だが、刑事罰の罰金の徴収事務を行っているのは検察庁である。
近年では酒気帯び運転などの場合、罰金の最高額が50万円と高額になっているが、罰金刑は交通違反の反則金とは性質の違う刑罰であり、国民年金のように減免、免除などという制度は一切なく、基本的に一括で納めなければならない。
罰金が払えなければ有価物は売却処分され、その代金は国庫に帰属
当然、そんな高額の罰金払えない、無職だから金が無いと言い放ち、罰金を納めぬ者も出る。そうなると財産を没収して公売にかける強制執行を行い、罰金にあてがうのだ。
これについて検察庁では以下のように説明をしている。
罰金を納付しないと,どうなりますか?
罰金などの徴収金を任意に納付しない場合は財産に対し強制執行を行います。また,罰金・科料を納付せず、強制執行をすべき財産がない場合には,労役場に留置されることになります。
典拠元 検察庁公式サイト
http://www.kensatsu.go.jp/qa/qa4.htm
そして、罰金にあてがう資産なき場合、検察事務官が地検に連行し、刑務所に併設された労役場に入れるのだ。これがいわゆる換刑処分。労役場では3か月程度の労役を行って、罰金相当額を稼ぎ出し、罰金を国庫に納めるというわけだ。
労役場とは何か?刑法第18条に「罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する」とキチンと明記されている換刑処分のことだ!
労役場に留め置かれた者は刑務官に素行の悪さや不真面目さを叱責されれながら薬袋を一日実労働8時間で100枚程度折らさせられて、日給5000円(裁判官の命令により1万円の場合もある)の月収10万円で、何十万もの罰金が完済できるまで何か月かの強制労働を週休二日制で行う。
証拠品の押収事務
裁判の証拠品の押収も検察の業務である。押収された証拠品のうち、本来の所有者が所有権を放棄したものについては返却されないが、返還を希望している場合は返却される。ただし違法なものなど、没収されたものについては高価な品物であれば売却処分となり、そのお金は国に帰属するほか、価値のないものについては廃棄処分となる。
日本初の女性検察官・門上千恵子の壮絶な半生
毎日新聞の報道によれば、2018年3月時点で日本の女性検察官の数は482人。実に全検察官の4分の1が女性検事で占められていることになるという。では女性検察官第一号はどんな女性だったのだろうか。調べるとその壮絶とも言える人生が浮き彫りになった。
戦後、検察官に女性の任用が認められると、昭和24年、門上千恵子は婦人(女性)検察官第一号となった。門上千恵子の母性と愛情を前面に出した取り調べには大悪党も罪をすべて自白したという。
順風満帆であるかのように見えた彼女の検察官としてのキャリアだったが、東京地裁で少年事件を担当していた昭和39年、唐突に幕を閉じた。2人の息子の母であった当時49歳の門上千恵子の家庭内で凄惨な事件が起きた。高校生の長男が次男の頭を鉈で滅多打ちしにして命を奪ったのだ。
その後の裁判で判明したところによると、彼女あるいは大学教授である夫の教育方針なのか、家庭内は異質だった。少年犯罪者には母性を前面に出した捜査と取調べが評価されていた女性検察官の彼女だが、ヒートのハナ刑事の女検事版みたいに仕事熱心のあまり、帰宅は夜遅く、二人の子供のココロは置き去りで、食事も一緒にしないなど自身の息子には放任主義なのかネグレクトなのか冷たかったという。結果として二人の息子が野球をめぐってお互いに確執を抱き、対立していたことは弟が兄に加害されるまで知らなかったという。
この事件を受け、同女は検察庁を辞職。その翌年にヤメ検弁護士となった。その後、家族の不祥事を恥ることなく、後年は80歳を超えても弁護士として活躍し、女性を400人以上レイプしたとされるスーパーフリー事件の主犯・和田さんの弁護などを務める一方、警察学校の講師も任された。2007年に門上千恵子は92歳でその生涯を閉じた。
参照元 http://www.maroon.dti.ne.jp/knight999/joseikenji.htm
これ映画化まったなしだと思いますが。誰かーはやくー。
検事・副検事になるには?
検察官になるには実に多くの方法がある。最も難関だが標準的なコースが、司法試験合格だ。また現在裁判官として職についている者。つまり判事や判事補といった者も検察官に転官する権利を有している。
さらに弁護士や、3年以上特定の大学において法律学の教授または助教授の職にあった者、3年以上副検事の職にあって、検察官特別試験に合格した者も検察官に任命される。
一方、副検事になるには検察事務官、警察幹部、自衛隊幹部警務官などから選考試験を経て採用されるなど多彩なコースが多い。このような例で採用された副検事も、一定期間副検事として勤務を経たのちに、試験の上で検事に任用されるのだ。
なお、検察官には法で決められた年齢制限はない。また、検察官の定年は検察官が63歳で検事総長は65歳となっている。
検察官の採用試験に関する事務は法務省の人事課が行っている。