警察による煽り運転取締りの手法解説

2017年、東名高速で家族の乗った車が高速上で煽られたうえ、前方に割り込まれて強制停車させられ、降りてきた男に因縁を付けられ、夫が引きずり出されたところに後続車が突っ込み、被害者夫婦が命を落とした『東名高速事件』が発生しました。

犯人が被害者に因縁を付けたのは、被害者男性からパーキングエリアでの駐車位置を注意されたことが原因だったこと、さらに犯人はこの事件以前、さらには事件の2か月後にも他車を煽る、無理やり止めて脅すなどしており、男が元から危険性を帯びた悪質運転の常習犯であることも報道されています。

参照元 https://www.sankei.com/premium/news/171023/prm1710230004-n1.html

それらの報道の中でも、Jキャストニュースでは犯人が何度も交通事故を起こして保険会社から金をもらうため、保険会社のブラックリストに入っていたと伝えています。まさにこの事件の犯人は意図的に車を凶器に変える『煽り運転が目的そのもの』の人間だったのです。

そして、この事件以後、世の中は大きく変化しました。

1、ドライブレコーダーの普及

東名高速事件の犯人を警察が3か月後に逮捕するうえで役に立ったのが、付近を通行していた第三者の車両に搭載されていたドライブレコーダーの映像でした。

警察のパトカー専用ドライブレコーダーとは?

それ以前からドラレコの動画が裁判で証拠に採用されるなど活用例がありましたが、この事件の報道後、ドライブレコーダーはさらに普及が進んだと言えます。

2、警察による煽り運転の積極的な摘発と危険性帯有者指定

そして東名高速事件以降、警察庁は煽り運転を積極的に摘発するよう全国の警察本部へ指示を出しました。さらに、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあれば、危険性帯有者に指定し、免許を取り上げるように方針転換をしています。

公安委員会が指定する危険性帯有者とは?

運転免許の取消しや停止等の規定を定めた道路交通法103条では1号から7号までそれぞれ、精神病、意識障害、認知症、身体障害者、アルコール中毒者、覚せい剤中毒者、それらの疑いがあるのにも関わらず、医師の診断書を公安委員会に提出しない者、そそのかしなどをした者について規定されていますが、危険性帯有者は8号として以下に指定された者です。

前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき(8号)

簡単に言えば、運転中、ふとしたキッカケで豹変し、他車や歩行者に因縁を付けて交通の危険を生じさせるおそれのある者のこと。ハンドルを握れば人格が変わるという言葉が日本でも昔から知られているように、普段は温厚でも、相手に割り込みをされたりなど、ふとしたきっかけで攻撃的になるなど、精神不安定状態になる例が見受けられます。

このように秘めた野獣性とオラついた豹変癖を持ち合わせ、実際に他人の車や人に危害を加えて事故を引き起こす、または事故を起こす可能性が高い者を公安委員会では危険性帯有者として一般ドライバーと区別し、免許を与えない、またはすでに与えた免許を停止させることができると規定しています。実際に事故を起こさなくても事故を起こす可能性(おそれ)があるというだけで指定が可能という点に留意が必要です。

取り締まり当局側では東名高速事件以後「後方からの追い上げ」「急な割り込み」「蛇行運転」「幅寄せ」などを行う運転者が一般のドライバーの不安を高めていると指摘し、彼らを積極的に摘発するとともに危険性帯有者に指定し、免許を取り上げるよう全国の警察本部へ一斉指示を出しています。

2017.12.16 10:05 免停で「あおり」防止 警察庁、道交法適用指示 累積なくても最長180日間

典拠元 https://www.sankei.com/affairs/news/171216/afr1712160005-n1.html

北海道警察によれば、2018年に道内で検挙されたあおり運転では4人が暴行罪などで逮捕や書類送検をされ、全員が『危険性帯有者適用』を受け、 公安委員会により30日間の運転免許停止処分を受けています。

典拠元 https://www.sankei.com/affairs/news/180713/afr1807130012-n1.html

実際のあおり運転取り締まり方法

全日本交通安全協会によると「あおり運転」に該当する行為として複数の行為が取り上げられていますが、取り締り当局による取り締まりの対象となる煽り運転に代表されるものには「後方からの追い上げ」「急な割り込み」「蛇行運転」「幅寄せ」などがあり、いずれも相手を威嚇する危険な運転としています。

警察庁では2018年6月1日から1週間、主に高速道路上での「あおり運転」一斉取り締まりを行うと発表。取り締まりに当たっては交通用覆面パトカーや白バイなどの車両だけでなく、航空隊のヘリコプターを投入し、空陸連携での取締りを行う静岡県警の例もあります。

警察のヘリを運用するのは各都道府県警察本部地域部に編制された航空隊だ!都道府県警察航空隊とヘリコプターの運用