アメリカでも日本と同じく、偽の覆面パトカーによる事件が相次いでおり、市民は偽警官、偽覆面パトカー(いわゆるフェイク・ポリスカー)に対しては強く警戒をしているのが実情だ。
やはり、中には間抜けな偽覆面もいて、あろうことか帰宅中の現職警官の自家用車を止めてしまい「誰っすか?バッジナンバー、ソラで言うてみ?」とやられ、そのまま御用になった事件もある。
2019年にフロリダで発生した事件では、犯人が刑事の車とは知らずに停車させ、通報されて逮捕されている。
OOPS: When Matthew Erris decided to play cop, turn on his red and blue lights and pull somebody over, he didn’t know the other driver was a REAL undercover #TeamHCSO detective! Deputies found an airsoft pistol under his seat. Erris is facing a charge for impersonating a LEO pic.twitter.com/jStsiWAImD
— HCSO (@HCSOSheriff) April 18, 2019
男はエアソフトBBも所持し、警官を騙った罪で起訴されている
そのような事件が起きうる環境であることから、最悪の場合、交通取締りの本物の警察官やState Trooperが市民に偽警官と誤解されて銃を突き付けられ、最悪の事態に至る懸念も払拭できない。
1997年に起きたブルーライト・レイピスト事件とは?
このような事件の中でも、95年から97年にかけてアーカンソー州ロノーク郡で発生したブルーライト・レイピスト事件は同州中部の無防備な女性たちに大きな恐怖をもたらしたアメリカ犯罪史上でも稀に見る『ニセ警官およびニセ覆面パトカー事件』だ。
青色警光灯(blue light)を自分の白いセダンにつけて警察車両を装った男・Robert Todd Burmingham(ロバート・トッド・バーミンガム)にハイウェイ38号で停車させられた4人の女性が性被害を受けたのだ。
バーミンガムは警察官や法執行官のふりをして女性に加害しようと企み、自家用車に警察の覆面パトカーが使う青ライトを使用したため、1997年に「ブルーライトラピスト」として知られるようになった。
彼は、レイプ、重大強盗、誘拐の罪で1998年にクロス郡で有罪判決を受けた。
バーミンガムはアーカンソー州の悪名高い不法に警察車両を装った連続強姦犯として起訴され、60年から80年の長期収監とななり、刑務所に収監されていた。
その後、2020年にリトルロック(KATV)刑務所当局が発表したところによると、「ブルーライトレイピスト」ことバーミンガムは新型コロナウイルス(COVID-19)によって死亡したことが判明した。
ブルーライトを規制するシャノン法の成立のきっかけに
実はバーミンガムによるこのブルーライト事件は、アーカンソー州で青色の警察車両用ライト、またはその青色レンズ、その他の法執行機関の記章を所持、購入、販売、または譲渡することを違法にする「シャノン法」が成立するきっかけとなった。
被害女性の一人であるシャノン・ウッズさんの呼びかけによって、覆面パトカーが使うブルーライトを所有している人々に厳しい罰金を科す法律の改正を支援し、2017年にアーカンソー州で法律が施行された。
またシャノンさんは、ロノーク郡セーフヘブンと提携して性被害者ケアセンターを開設している。
このように偽覆面パトカーを使って違反金をだまし取ったり、強盗や女性にわいせつ行為を働く犯罪者が多くいるため、一部の州警察では裁判所命令で交通取締用覆面パトカーの使用を禁止。ニューヨークでは96年から州知事令で交通取締のみ、覆面パトカーの使用を禁止している。
この事件が直接的に影響を与えたかは定かではないが、全米の警察機関では交通取締り用に完全なる覆面パトカーを使う例はほぼないようだ。
では、完全ではない覆面パトカーとは何か。
多くの場合、車体に何らかの警察の標を残し、完全に一般車両に化けない『ステルス』が使用されている。これについては以下の記事で解説している。
ただ、捜査用の覆面パトカーまで禁止された例はないようだ。