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現在配備される警察車両のうち、本部系の自動車警ら隊、機動捜査隊、交通機動隊などの第一線車両では『カーロケナビ』の搭載が主流だ。カーロケナビの驚くべき機能とは何かを見ていこう。
車内センターコンソール中央、または助手席に取り付けられたカーロケナビでは画面上での操作によって、パトカー勤務員の活動状況(例として交通取り締まり中、遊動警ら中、特命、休憩中などの勤務状態)も指一本で本部に知らせることができる。
そして、このカーロケナビこと「無線自動車動態表示システム」には、単にパトカーの位置情報を通信司令室に送信するだけではない、ふたつの驚くべき機能が付加された。その機能とは?
画像および文字情報での出動情報の共有
それは相互通信により、通信指令本部から指令された110番の内容、住所などの文字情報、被疑者の人着、車両や現場画像情報などをカーロケナビの画面上に表示、ならびに共有できる機能だ。
カーロケシステムを使用する捜査員は車載通信系の通話要領に則り、通信指令課に対して「これより映像情報を送る」旨の連絡を行った後に映像等を送信する手はずになっている。
現在の日本警察において、瞬時の動画像共有はもはや常識。近年ではパトカーの赤色灯上部に360度カメラを搭載する例も多く、その画像はリアルタイムで通信司令室へ伝送されている。
また、地域警察官等が110番通報等により現場臨場した際、PSD(地域警察デジタル無線システム)端末に付加された内蔵カメラを使用して撮影した映像等を一旦、通信指令室に送り、同室から現場活動中のカーロケ搭載車両に伝送も可能。
さらにオービスで検知された手配車両の情報を管内すべてのカーロケナビ搭載車両に一括で緊急配信もできる。
チームナビを警察の集団捜査力に最大限活用
さらにカーロケナビには、逃走車両の追跡時、現場の警察車両側で役立つ機能も付加された。それがチームナビである。
それまでのカーロケナビは、あくまで警察本部通信指令課のモニター画面でしか各パトカーの動きが把握できず、通信指令課の指令員が無線で各パトカーに指示を出していた。
チームナビはパトカー搭載のナビモニター画面上でもパトカー乗務の警察官、すなわち現場の車両同士でお互いの位置情報を共有可能にしているのだ。
チームナビが活用されているのは主に制服用の警らパトカーや交通用パトカー、そして機動捜査隊の車両だ。自車の近くにいる他の警察車両は「けいし110」や「こうき434」や「きそう216」など無線のコールサインでナビ画面に表示される。逃走車両の追跡では現場のパトカー同士で直接無線で連絡を取り、ナビ画面を見て先回りし、犯人の行く手を阻むことも可能だ。
このようにカーロケナビの配備は事件事故の初動対応を大幅に飛躍させたのである。
モニター上に個人宅の苗字が表示される
また、警察官の迅速な現場臨場を本システムが可能にさせている理由がもうひとつある。それは、パトカーのナビモニター上に表示される地図には個別の個人宅の苗字、さらに住宅の形状が表示されるのだ。
つまり、見た目は一般車両のカーナビと似てはいても、中身はセールスマンがよく使っていて、個人情報保護の声が最近高まりつつあるゼンリンの住宅地図とほぼ同じ。ジッサイ、ゼンリンは警察や消防でも使用されている。
警察のカーロケナビはエレクトロニクスと個人情報とマニアの欲望が大量に詰まった夢の装置、というわけだ。
出典はラジオライフ2006年2月号69ページ。
かつて使用されたカーロケナビはパナソニックの業務機CN-VX8200A
それまで広く配備されていたカーロケナビの機種は警察やタクシーでも使用されているパナソニックの業務用カーナビ「CN-VX8200A」の警察仕様。
新品で32万円もするというこの高機能カーナビ、警察でもカーロケ用として配備されたが、仕様として起動させると「ハロー!パナソニック・ナビゲーション・システム」という若い女性の音声が流れ、画面にはアニメ調でスーツ姿のOLが出てきたりと演出が心憎い。
また、毎回の起動ごとに別の女性キャラが出てきて、中には……ムフフ。なお、警察本部によっては各県警のマスコットキャラに変更されている場合もあるという。
参考文献様各種
http://policecar.nomaki.jp/pcsoubi/tsushin.html
http://minkara.carview.co.jp/userid/1685318/blog/35402884/
http://minkara.carview.co.jp/userid/1261000/car/939231/3569706/photo.aspx
カーナビベースのほか、タブレット端末も普及
さらに現在ではカーナビベースの警察仕様品ではなく、パナソニックの民生用タブレットPC「TOUGHPAD」などが搭載されている場合もある。
カーロケナビの設置場所は危険では?という一部指摘も
カーロケナビが装備されるのは所轄の警ら、それに機動捜査隊や交通機動隊、高速隊など本部隊の車両が多い。
一般車両ではわざわざカーナビを二つ設置する理由はないので、オンダッシュの純正カーナビひとつですむ。しかし、クラウン・パトロールカーの場合はそうもいかない。オンダッシュナビの収まるスペースにはパトカーとして必要なサイレンアンプ、それに警ら用無線車なら速度計測装置『ストップメーター』も収まっているので、必然的に助手席側への後付けになることが多い。
例外的に中央のコンソール部分に変則設置する場合もあるが、多くの警察本部では助手席側設置がポピュラーなようだ。
警ら、交通用、機動捜査隊の各車両では相勤者との二人乗務が基本のため、カーロケナビなどの操作は助手席勤務員の役割りということもある。
自動車雑誌のフリーライター山崎龍さんはパトカーが搭載するカーロケナビの設置位置に着目し、安全性の観点からそれに疑問を呈しつつ、トヨタおよび警察当局へ取材を行っている。
山崎さんの取材では県警で架装を行う場合、指定の業者へ依頼して取り付けてもらっているとのことだが、実際に架装を行っているトヨタテクノクラフトでは『助手席エアバッグが開いたときにカーロケナビが外れる可能性が考えられ、適切な位置とは言えない』としている。
一方、警察側は助手席側へのカーロケナビ設置に危険性はなく、過去に外れて乗員が怪我を負ったことはないとしている。
第72回 パトカーのカーナビ設置場所について https://www.croooober.com/feature/4410701
カーロケナビのまとめ
以上のように、パトカーが配備しているカーロケナビは市販品とははまるで違う高機能な情報共有システムなのだ。
また、現在は民間回線によるパケット通信を使うか、警察自営のデジタル無線の電波に乗せて位置や文字などの情報をパトカーと通信指令本部の間で送受信しているのだ。
一方、ミニパトなどでは搭載されていないほか、所轄に配備される私服用の捜査用覆面パトカーではカーロケナビではなく、市販の廉価なカーナビで済ませてある場合が多い。