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いわゆる『エコカー』に代表される車両には、内燃機関であるガソリン駆動のエンジンと電気駆動のモーターを備えた「ハイブリッド車(HV車)」や「プラグインハイブリッド車(PHV車)」、それにモーターのみを動力源とする「電気自動車(EV車)」が挙げられる。
ハイブリッドのパトカーは全国で多数配備されている。近年では警視庁にTOYOTA SAIの捜査覆面、同庁交通機動隊にカムリの交通覆面も登場し話題となった。
この記事では、パトカーとして配備されるエコカーの歴史と現状の考察を行った。
“エコカー”のパトカーの歴史
トヨタ・プリウス
世界的に成功した初の量産型エコカーといえばトヨタ・プリウスだが、実は警察車両としてのプリウスは1998年に登場した記念すべき初代10型からすでに配備されている。
その多くは警ら用のいわゆる白黒パトカーだが、これが警察車両におけるハイブリッド導入の先駈けとなったのだ。
トヨタ自動車の公式Twitterは衝撃的だ。家庭のコンセントから充電が可能なプリウスPHV仕様のパトカーから電気を取って信号機に送り、警察官が信号機を操作している。これにはトヨタの公式サイトにAV女優が登場したことよりもはるかに驚きと言わざるを得ない。
おじいちゃんとクルマで旅に出た。信号機を見上げ、「災害時はプリウスPHVのパトカーから電気を送って信号機を復旧できるんだ。」知らない間にクルマがすごいことになっていることを知った。詳しくはこちら https://t.co/BpXn2w1tdb #WOW #Toyota pic.twitter.com/iVEf23Obgx
— トヨタ自動車株式会社 (@TOYOTA_PR) 2017年3月10日
「災害時はプリウスPHVのパトカーから電気を送って信号機を復旧できるんだ。」
引用元
トヨタ自動車株式会社 (@TOYOTA_PR) 2017年3月10
このようにプリウスPHVのパトカーは災害時、信号用非常電源として活用できるメリットがあり、活躍が大いに期待されている。
ウクライナ内務省に贈与されたプリウスが警察の用務に適さないとして波紋を呼ぶ
一方こちらは外国の警察の話。2015年、日本の安倍総理大臣は我が国の科学技術の象徴としてトヨタ・プリウスをウクライナ政府に贈呈した。この贈呈については住友商事のプロジェクトのようで同社の公式サイトにて詳しく記載されている。
http://www.sumitomocorp.co.jp/news/detail/id=25556
それによれば、警察車両仕様のプリウス約1200台がウクライナ政府に納入され、ウクライナ政府は今回のプリウス贈呈を日本とウクライナの友好の懸け橋であるとしていた。ところが、この贈呈されたプリウス、ウクライナ警察で配備されて運用されたものの、多くが事故った上に、まったく警察の用務に適さないとして、廃車になってしまったのである。
この事態にはウクライナのクリミア地方を勝手に併合したロシアもなぜか言及。Twitterに駐日ロシア連邦大使館 (@RusEmbassyJ) 公式アカウントでこんなtweetを投稿し波紋を呼んでいる。
#日本 が #ウクライナ 内務省に1500台のトヨタのプリウスを贈呈したことを受け、ウクライナ大統領は「それはウクライナと日本の友好の象徴となる」と強調しました。その後、あの友好の象徴が酷く事故っているケースが増えている一方です。苦笑 pic.twitter.com/ieT6PwL5Jh
— 駐日ロシア連邦大使館 (@RusEmbassyJ) 2015年8月20日
プリウスがパトカーとしてウクライナ警察の任務に適さないとは、詳細は判然としないものの、日本警察では県費で多くのプリウスが警らパトカーに採用されており、米国でもNYPDが環境対策でプリウスのパトカーを導入しており、一概にプリウスが警察の用務に適さないという断定はできない。
しかし、それぞれのお国事情では、その国の警察の用務ではプリウスが適さない場合もあるのだろう。
ホンダ・インサイト
これまで、警察庁では”私服用ハッチバック型車”および”私服用ハッチバック型無線車”の区分で、ホンダ・インサイトの2代目となるDAA-ZE2型を国費で取得、全国の警察本部へ配分した経緯がある。
2009年の同時期の予算で、白黒パトカーとしてのインサイトも数十台が取得されたが、捜査用覆面パトカーは実に500台もの大量配備であった。
2人乗りのクーペ型から2009年に5人乗りのハッチバックへと生まれ代わったインサイトは、ここでようやく先行のトヨタ・プリウスのライバルとなり、シャープなデザインと200万円を切る車体価格が受け入れられてヒット。
しかし、インサイトが搭載していたのは一機のモーターで発電と駆動を行うマイルドハイブリッドと呼ばれる簡易型システムであったため、モーターのみでの走行は不可能であった。
SAI
ミドルオヤジ向けのハイブリッドセダン、SAI。2013年ごろに警視庁年頭部隊出動訓練で現れた際には、ボディ側面に機動隊の桜マークをつけていたため、おそらくは機動隊車両と思われる。
機動隊の覆面パトカーといえば「Aランク」「Bランク」クラスの重要防護施設の巡視、警戒任務に就く『エリア警戒車』が有名だが、おそらく同車両ではないか。
また、同行事では桜マークなしのSAIも登場しており、こちらは公安部に編成されている公安機動捜査隊の車両ではとの指摘もある。
いずれも警視庁の捜査用覆面パトカーでは珍しく、フロントバンパー内に前面赤色灯を備えている。
カムリWS
2019年、警視庁交通機動隊にて配備が確認された新型覆面パトカー、70系WSカムリTRD仕様。国費配分車両ではなく、東京都の予算で購入されたいわゆる”県費パト“だ。
TRDとは株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント純正のカスタムパーツで武装したトヨタの特別仕様車。
本来のTRD仕様カムリではダミーマフラーとなるが、カムリTRD覆面ではダミーは不要と割り切ってはずし、その代わりになんとメッシュカバーをかけ、その奥には後方サイレン用スピーカーを架装している。
それにしても、この時代でもまだまだユーロアンテナに偽装させた無線用アンテナは現役配備のようで、カムリTRD覆面にも装着されているのを見ると、その汎用性の高さには驚かされる。車内アンテナ?ナニソレって感じだ。
こんなスゲエ車両がたまに出てくるのが県費パトの魅力なのだ。
さらに2021年3月からは国費配備としてカムリの機動捜査用車も登場。マークXの後継車両と見られている。
三菱 電気自動車(EV)「i-MiEV」
神奈川県警に試験配備された電気自動車・三菱i-MiEV。データ取り目的で県警に無償で提供されたが、本採用には至らなかった。
まとめ
今後はエコカーも警察の覆面パトカーとして次第にポピュラーになっていくのか。日本警察ではプリウスをはじめとするエコカーは活躍しているようでなによりだ。