『トランシーバーで仲間と連絡を取り合い』パトカー撮影に興じる女子大生がG7広島サミットに!との報道が話題!しかし、それは広帯域受信機です……

記事内の引用について 画像の出典 ヤフー&ANNさんより

G7各国から要人が集まった『G7広島サミット』は今月21日に無事閉幕となった。

今回のサミット警備のため、全国から広島へ派出された都道府県警察官は実に2万人以上。今回は現在ロシアとの戦争が続いているウクライナのゼレンスキー大統領が来日するとあって、これまで以上の厳戒警備だったことは言うまでもない。

そんな今回のサミットにて、テレビ朝日が2人の女子大学生に取材を行っていた。

同報道によれば、この2人の女子大学生は”警察車両を撮影しにサミットへやってきた緊急車両マニア”。そして、動画では女子大生2人のうちの一人が、ハンディー無線機のようなものを持つ姿を映している。

特小かデジ簡なのだろうかと思ってよく見ると、ICOMの『IC-R6』であった。無線機ではなく広帯域受信機である。だが、動画内のアナウンサーの説明によれば、

手にはカメラのほか、同じ趣味を持つ仲間たちと連絡を取り合うためのトランシーバーも。警護される要人たちの行動を、独自の情報網を駆使して把握しているそうです。

出典 女子大学生のお目当ては「警察車両」厳戒態勢…ゼレンスキー大統領「車列」に大満足 5/21(日) 23:35配信

とある。言うまでもなく、無線機ではないIC-R6では仲間と“連絡を取り合う”ことはできない。

コメット×山本無線共同開発のエアバンド受信専用ミドルサイズアンテナ『CMY-AIR1』が装着された広帯域受信機のICOM IC-R6。ということはお目当てはエアバンド(航空無線)? 画像の出典 https://news.yahoo.co.jp/articles/30a65643d0494e75fa6a6e967acb26d97776b601

アナウンサーの説明をどのように解釈してよいのか、視野の狭い筆者には読み取れなかったが、ともかく彼女たち”緊急車両マニアの女子大生”はトランシーバーで同じ趣味の仲間と連絡をとって、独自の情報網を駆使して警護される要人の行動状況を把握しているという。報道機関による嘘やデマ、あるいは印象操作とはこうやって作られるのだなぁと思う次第である。

それはともかく、大きなイベントは受信機が一台あるだけで楽しい。BTS、つまり舞台裏まで見られるのだから。とはいえ、自衛隊や在日米軍の主催するイベントなどでは受信機の持ち込みが禁止される場合もあり、事前確認が必要だ。

広帯域受信機での受信、注意が必要な時と場合とは?大変なことになる前に!

ではサミット開催期間中、彼女たちの傍受対象としていた通信は何か?IC-R6は言うまでもなくアナログ波受信機なので、現在では減りつつあるアナログ無線の特定小電力無線、その他業務無線、航空無線の一種である警察ヘリのカンパニーラジオなど限られたものしか受信できないが、エアバンド愛好家の求める受信機としてのポテンシャルは高く、発売から10年以上を経ても圧倒的な支持率を誇るのも事実。

『受信改造済みじゃないIC-R6』を買ってしまう人が続出!ちゃんと言ってるのに、なぜなのか……?

米国のバイデン大統領を乗せたエアフォース・ワン飛来の情報などが収集できる場合もある。

ただし、警察のヘリが警察業務の内容をカンパニーラジオで交信する事はほとんどなく、警備の核心に触れる事は無いから、ヘリのカンパニーで警察情報は集まらない。また、ヘリテレ連絡波もデジタル化されている。

デジタル警察無線については高度なデジタル変調+暗号化されているので、目的にもよるが、暗号破りはご法度。

デジタル警察無線を解読する受信機を『まともなメーカー』が発売しない理由とは?

ただ、このような大規模なイベントでは“聞けない警察無線”よりも、多数集まっている報道機関のデジタル報道連絡波(マスコミ無線)こそが『役に立つ』、もとい、『面白い』。

デジタル報道連絡波は、つい先日発売されたばかりのアルインコDJ-X100デジタル対応受信機で簡単に受信が可能。

デジタル・報道連絡波(放送連絡波)の受信方法

デジタル報道連絡波(マスコミ無線)受信でネックとなるのは秘話コードの解析。当然、特ダネを狙う彼らは同業他社やフリーの“ナイトクローラー”に自分達の情報を教えたくないから、搬送波に秘話コードをかけ、つまりスクランブル化して部外者に交信を秘匿してしまう。

とは言え、DJ-X100デジタルでは秘話コードの自動解析に対応しており、簡単に受信が可能。DJ-X100なら情報収集でワンチャンあったかも!?

DJ-X100受信改造済みモデル【防水保証無し】 広帯域受信機 (DJX100受信改造済みモデル)

そんなにすごいの?DJ-X100。ユー!裏コマンドで隠された機能を自己責任の名の下にフル解放しちゃいなよ!ナウいナイトクローラーの基本装備はDJ-X100で決まりだぜ!

とはいえ、日本では電波法という法律があり、上述の各種無線から知りえた情報を自身の行動に“役に立たせる”と『窃用』となり、処罰の対象となることは留意しておきたい。

結局のところ、今回のサミット会場で緊急車両フリークの女子大生が持つアナログ受信機が会場での情報収集において、その成果に寄与したか否かは不明だが、肝心のゼレンスキー大統領が来日したという重大情報は、受信機からではなく(彼女たちを)取材中のANNスタッフから直接口頭で教えられて初めて知り、驚いた様子だ。これには受信機愛好家の筆者も切ない気持ちに……。

ともかく、彼女らがゼレンスキー大統領を乗せた青灯付きの特別防弾使用『BMW』を含む警護車列の撮影に成功できたことを祈りたい。