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カナダでは時折、緑色のフラッシュライト(ストロボライト)をつけた車が事件、事故現場など、今まさに助けが必要な人のもとへ向かって走っている。
しかしながら、カナダのパトカーや消防車といった緊急車両は赤や青のライトを使用するが緑色のライトは使っていない。では、この緑のフラッシュライトを点けた車には誰が乗っていて、いったい何を意味するのか?緊急走行は可能なのか?
緑色のライトを使うのはボランティア消防士の自家用車
実は緑のライトが搭載されるのは人命救助に向かうボランティア消防士の自家用車なのだ。ボランティア消防士は民間人が会社勤めなどをしながら非常時に消防士として対応する制度であり、日本の消防団員とほぼ同じ制度。実際予算の少ないカナダの小さな街では彼らによって地域の防災が支えられている例は少なくないのだ。
スティッツビルは、何十年もの間、低コストでありながら非常に効果的なボランティア消防団に恵まれてきました。
出典 車両の点滅する緑色のライトの道のり–それは礼儀です
https://stittsvillecentral.ca/right-of-way-for-vehicular-flashing-green-lights-its-a-courtesy/
この動画はオタワにおける消防行政当局が行なっているグリーンライトキャンペーンの啓発動画だ。
自宅で食事をしながらくつろいでいるボランティア消防士の彼女は突然の急報を受け、自家用車に急ぎ乗り込みエンジンをかける。そして彼女はあるスイッチを「オン」にした。フロントガラス内側に取り付けられたグリーンのライトが点滅する。
画像の出典 GREEN LIGHT AWARENESS CAMPAIGN https://www.youtube.com/watch?v=EPtluTXMCIk&t=56s
ライトを点灯させる彼女の車が後方からやってくるのに気がついた前走車は、すみやかに路肩へ停車し、彼女へ進路を譲った。その脇を彼女はそれほど早くはないスピードで追い抜いていく。
ではこのグリーンライトをつけた自動車は消防車のように緊急走行ができるのであろうか。カナダでは、消防車や救急車は赤色のフラッシュライトを使っている。フラッシュライトとサイレンを適切に使用することで一般車両より走行の優先権を得られるのは日本と同様だ。
点滅する緑色のライトは通行の優先権など特権を与えない
しかし、この緑色のライトと言えど、正規の消防車両の赤ストロボと違って、通行権はまったく優先されず、スピードの超過や一時停止の免除も与えない。緑色のライトを点滅させる目的は、他のドライバーが緊急事態に向かう途中の消防士を認識し、礼儀正しく、通行権を譲ることを支援することにある。つまり、通常の消防車両に道を譲る義務とは異なり、任意となる。すなわち、譲らなくとも罰則はないわけだ。そこに『義務』と『礼儀』の違いが際立つ。
消防署長のDenysPrevost氏は、LEDフラッシャーを見つけたときにドライバーが車を止めることは、義務ではなく礼儀と見なされていると述べた。
https://www.wellandtribune.ca/news/niagara-region/2013/02/19/when-a-green-light-means-yield.html
義務ではないものの、この緑色のライトをつけたボランティア消防車たちの自家用車が後から来た場合にはできるだけ道を譲ることがマナーとして広く推奨されているのだ。
一方、オンタリオ州でも礼儀ライトは一般的であり、19,000人以上のボランティア消防士が自分の車に礼儀ライトを持っているが、点滅する緑色のライトの使用はオンタリオ州の消防署専用であり、緑のフラッシュをボランティアに発行する前に、ボランティアは、ライトの意味と適切な使用方法を概説した安全およびリスク管理コースを受講し、試験に合格する必要がある。そして、消防車、パトカー、救急車などの緊急車両と同じ権利をボランティアに与えるものではないとしている。
https://calgary.ctvnews.ca/southern-alberta-firefighters-get-literal-green-light-1.4889119
また、交差点ではむしろ混乱を引き起こすため、使用は控えるように指導している。
グリーンライトの適切な使用はボランティア消防士が現場に到着するレスポンスタイム改善につながる
このように、カナダではグリーンのフラッシュライトはボランティア消防士が現場で自家用車へ向かう際の使用が推奨されているが、緊急車両のような優先権はない。
善良なドライバーからの”礼儀”は、ボランティア消防士が現場に到着するレスポンスタイムの改善に寄与するため、消防当局でも広く啓発が行われているのである。
もしカナダに旅行等に行かれる際は、このようなグリーンのライトをつけた車が人命救助が必要な現場へ緊急対応で向かうボランティア消防士であることを知っていれば、助けが必要な人にも、万が一、あなたに助けが必要になったときにも幸いするかもしれない。
※当初、この記事では『アメリカ(米国)』と表記していましたが、正しくは『カナダ』です。訂正しお詫び申し上げます。