ミシガン州警察のパトカーに取り付けられる”時代遅れ”の二つの装備品とは?

米国のミシガン州警察では1954年以来、おなじみの鮮やかな青い配色(Dulux 93-032)に加え、車体側面に稲妻POLICEデカールをつけたパトカー、愛称”青いガチョウ”を配備しています。

以前はミシガンでもクラウンビクトリア・ポリスインターセプターが優勢でしたが、すでにダッジチャージャー、SUVのシボレー・ タホなど全米の警察で主流の最新車両に置き換わっています。

ところが、それらミシガン州警察の誇る最新パトカーたちは、ほかの州警察では見られない、今では時代遅れと誰もが口にするかもしれない装備品を備えています。その装備品を検証しましょう。

1、今なお円筒型警光灯をパトカーに装備する

全米の警察機関では、より薄型の空気抵抗を抑えた最新式のLEDタイプのwarning light(警光灯)をパトカーに載せています。しかし、ミシガン州警察の誇る青い最新パトカーは、今では旧式となった円筒形の警光灯を中央に備えているのが特徴。

”青いパトカー”は全米でも少なくありませんが、青色単色に加えて、円筒形の単一型警光灯を備えるミシガン州警察の車両スタイルはかなりの一意性を持っています。鮮烈なミシガンの青い衝撃と言わざるを得ません。出典 At least 100 patrol vehicles honor Michigan State Police Trooper killed on-duty at funeral and tribute

この最新のマッスルカーと旧型の円筒形のwarning lightとのギャップが何とも言えません。

ミシガン州警察では1960年代から導入されている円筒形警光灯ですが、80年代、90年代と全米の州警察で主流となったバータイプの警光灯を導入せず、コストの安さからこの旧式円筒形警光灯を使い続けたようです。

ただし、この円筒形警光灯ですが、かつて60、70年代に主流であった回転式ハロゲン発光タイプのUnity Manufacturing製のRV-26またはRV-46「スピットファイア」をやめて、現在は電球の交換とローターモーターの保守の手間と費用を削減するために、LEDタイプにアップグレードされています(一部のパトカーには25〜30年前のRV-46をまだ備えているようです)。

白熱灯からLEDになったことで電力の消費を抑え、回転機構を動作させるモーターが不要になり信頼性が向上、メンテナンス費用の削減、それでいて高輝度となりました。

もっとも、緊急走行時にはこの単一の円筒形の警光灯だけでなく、パトカーのフロント前方に備えたプッシュバー上部の赤と青のLED型フラッシャー、さらにヘッドライトとテールライトのフラッシャーも使用しており、視認性には問題がないようです。

ただ、LEDになっても、この円筒形のデザイン自体は1979年に導入された製品をそのまま踏襲しているそうですから、それでもなお円筒形のスタイルにこだわり続けるミシガン州警察の伝統を重んじる姿勢がうかがえます。

なお、ミシガン州警察でも屋根に警光灯を備えないスリックトップ・パトカーが配備されており、このパトカーは車内にフラッシュライトを備えています。

米国警察の屋根に警光灯がないパトカー『スリックトップ』の利点とは?

2、『STOP』と描かれたボンネット上の透明なプレキシグラス板

さらにもう一つ、ミシガン州警察の配備するパトカーには他の州警察では見られない装備品を搭載しています。それがボンネット中央に設置された「フードライト」、「ヘイラー」、「フカヒレ」と俗に呼ばれる透明なプレキシグラス(アクリル)製の板状の装備品。

『おやっ?日本警察の高速隊のパトカーでも一時期装備しており、今では外部突起規制で絶滅した虫除け板(バグガード)のことか?』と思った方もいるでしょう。

いいえ、これは虫除け板ではありません。なにしろ日本のかつてのパトカーと違う向きで装着されているのです。

このプレキシグラス板フードライトには『STOP-StatePolice』、すなわち「州警察」と「停まれ」と大きく書かれており、夜間には点灯もできます。

実はこの装備品、それは今から遠い1949年頃にはすでにミシガン州警察のパトカーのボンネット上に出現し始めます。これはもともと、1920年代から30年代にハイウェイパトロールに使用されたミシガン州警察の白バイのフロントフェンダーにある同様の小さな『STOP』看板を踏襲した装備でした。

当時の白バイ警官はしばしば「サイドストップ」を行い、違反者らに停止するよう合図しました。運転手は窓の外を見て警察官が示す停止指示を確認できました。

つまり、違反者などに対しての停止命令を示すアイテムだったのです。

いったんは、この”『STOP』看板”は廃止されましたが、今度は白バイの代わりに1949年頃、パトカーのボンネットに大きな「ストップ・フードライト」を装着。

当時のパトカーに装備されたこの”『Stop-StatePolice』看板”には複数の用途がありました。まず道路封鎖の場合です。事件発生時、交差点をブロックする際に「Stop-StatePolice」の標識により、赤信号の操作の必要がなくなりました。

また、夜間に地域住民宅へ訪問した際に、当時のミシガン州警察の黒い公用車が警察車両であることをより明確に市民へ周知させることができ、奥さんが護身用のライフルを持ち出して玄関ドアの向こうに緊張してたたずむ必要がなくなりました。

ミシガン州警察のパトカーは1954年、車体の配色が黒から現在の明るい「MSP」ブルーに代わる同時に”稲妻POLICE”マーキングになるまで反射しなかったので、フードを点灯させることで「Stop-StatePolice」の標識が役立ちました。

誰が見ても州警察のパトカーです。ああ奥さん、ライフルは不要です。出典 govtech.com

今日”『STOP』看板”はミシガン以外の州警察では普及せず、完全に時代遅れですが、彼らミシガン州警察の方針では今後も伝統のためにパトカーのボンネット上にこの”州警察マスコット”を載せるんだそうです。

ただし、”『STOP』看板”を使った運転や戦術の訓練などは1981年以降しておらず、実用性は廃れています。そして今日、夜間にパトカーの存在を屋根の警光灯と共によりアピールするのは”『STOP』看板”ではなく、夜間に反射する車体側面のPOLICEマーキングとなりました。

なお、ミシガン州法では警察車両には少なくとも助手席側に警察を示すマークを付けることが義務付けられています。

主に照明の未発達な時代、夜間での警察活動時に活用される装備品だったようです。

このように保守的なミシガン州では州警察のパトカーもまた伝統の装備を絶やすことなく、現代でも装備しているというわけです。すなわち、円筒形警光灯と『Stop-StatePolice』看板はどちらも、ミシガン州警察の伝統かつ流儀なのです。