30年以上に渡って警察官に支給される『Pチャンイヤホン』は放送業界でも大絶賛だった!

勤務中の制服警察官や私服の機動捜査隊員などは受令機に繋いだ片耳イヤホンを耳にして、警察本部からの主に110番通報内容の指令を聴取している。

実はこの片耳イヤホン、マニアの間では通称『Pチャンイヤホン』と呼ばれる、とても高性能なイヤホンなのだ。

署外活動中の警察官が使うイヤホン聴取式『受令機』とは?

『Pチャンイヤホン』はアシダ音響の製品で正式名称は「PR-17」。声優やテレビマンといった”声でお仕事”の最前線で使用される高性能業務用イヤホンである。

警察無線は俗に『Pチャン(ポリスラジオのチャンネル)』とも呼ばれたので、この「PR-17」は”お巡りさん愛用品”としての親しみを込め『Pチャンイヤホン』と呼ばれるわけ。そして、警察では30年以上前から官給品として配備されている定番品でもある。

PR17グレー3.5Φ50CM8Ω

正確にはこの『PR-17』には官給品と民生品の2種がある。市販のものとの違いは刻印など僅かな部分のみで、プラグサイズはφ2.5mmまたはφ3.5mmの二種。ラジオ、Androidスマートフォンの多くはφ3.5mmサイズのイヤホンジャックが標準となっている。

『PR-17』のコネクタ形状はストレート型と『L』型がある。無線機などの本体上部にイヤホンジャックがあるならストレート型でもいいのだが、無線機の本体横にイヤホンジャックがある場合はL型をおすすめしたい。

というのも、これは本体上部にイヤホンジャックがある無線機や広帯域受信機で応用できるテクニックで、受信機等の背面のベルトクリップにコードを一周させることでイヤホンを抜けにくくし、なおかつ、万が一コードが引っ掛かった際、イヤホンジャックに負担をかけない方法であり『ラジオライフ』2004年10月号の『受信レッスンABC』でアドバイスしている「師匠秘伝」の技なのだ。

なお、警察官が使用するのは受令機向けの「1kΩ」タイプ。ただし、上述のラジオライフ2004年10月号では「一般的には8Ωのもので充分」としている。

8Ωとは民生用のポケットラジオやトランシーバー等の基本的な仕様だ。なお、TV局のモニター用は600Ωタイプとなる。

警察官の耳元に鈍く輝くPR-17。Pチャンイヤホンである。編まれた独特のコードがかっこいい。

また、イヤホンコードは1mが標準品だが、50cmタイプ(特注)もある。

かつてはグレー(灰色)、現在は全国で目立たない黒色のコードが主流になっている。

だから制服警察官も使うし、方耳イヤホン姿の怪しげな人物がいれば、私服警察官というわけ。

でも、実際の刑事がこんなイヤホンをこれ見よがしに着けていれば、即バレてしまう。それを防ぐために旧型のUR-3受令機ではコードレスイヤホンのオプションまであった。しかし、当時の技術ではまるで補聴器のような外観をしており、どっちにしろ目立っていた。

なお、この”Pチャンイヤホン”は業務中に耳につけていても疲れにくい優れたイヤホンであるが、あくまで無線交信等における人間の音声が聞き取りやすい仕様のイヤホンであって、音楽を聴くことには適していない。製造元のアシダ音響もその点について注意喚起のツイートを発している。くれぐれも間違った使い方をしないようご注意願いたい。

なお、制服警察官はPチャンイヤホンをイヤホン保持器とのセットで使用することが多い。イヤホン保持器は別名『共鳴管』とも呼ばれ、イヤホンを保持しておくクリップ、紛失防止のためのフックとヒモ、そして金属パイプがセットになった便利グッズ。勤務中、耳にイヤホンを刺しっぱなしだと痛くなるので、適宜はずしてこのクリップに保持しておくわけ。

しかし、イヤホンを外すと大事な指令が聴取できないのでは困る。そこでイヤホンをパイプ状の共鳴管の端に差し込めば、音声が共鳴管内部で響くので、耳からイヤホンをはずしても受令機の音声が耳元ですこぶる明瞭に聞こえるという仕組みだ。

通常、警察官はこの共鳴管のフックを制服のボタン穴に引っかけて連結し、クリップ兼共鳴管は肩のエポレットに挟んで固定しておくのである。

ちなみにこんな使い方もあるそうです……。

さあ、キミも今日からPチャンイヤホンをスマホに挿して『あやしい私服の人』になろう(責任は取れません)。