タイトルバナーの出典 日活映画配信@nikkatsu_rights
同じ沢田研二(ジュリー)でも、交番の警察官をキンチョールに偽装した”催眠ガス”で眠らせてけん銃を奪い、原発に侵入して奪ったプルトニウムで作った原爆で日本政府を脅迫する”9番”こと狂気じみた中学校理科教諭を演じるのは『太陽を盗んだ男』(1979年)ならば、今度は”奪われる警察官側”を演じたのが本作『リボルバー』(1988年)だ。原作は佐藤正午の小説で監督は今作が遺作となった藤田敏八。
沢田といえば、里山暮らしの作家を演じる主演作『土を喰らう十二ヵ月』(中江裕司監督)が2022年11月11日(金)の封切りを前に話題だが、チャンネルNECOでは11月7日、同作の公開記念として『リボルバー』が放送される予定だ。また、Amazonプライムビデオではすでに会員向けの無料視聴対象作品として配信されており、既に同プライム会員の方はこの機会に試聴してみてはどうだろうか。さて『土を……』ではナメコを採りに行く沢田だが『リボルバー』では腰のニューナンブを盗られてしまう間の抜けた”どじポリス”こと鹿児島県警巡査部長・清水を演じている。飄々としたどこか憎めない清水に『責任の取り方』を追求する地元紙記者を演じる我王銀次、若い女にすがる初老の悲哀を演じる小林克也、本筋に絡むようで絡まない(!?)柄本明と尾美としのりの全国放浪中の博徒コンビ、完全にいっちゃってる目で暴行の果て、札幌の大通り公園で失禁する山田辰夫など名優らによる名場面は目が離せない。
「リボルバー」(1988年)
沢田研二扮する警官が居眠りしていて拳銃を奪われる。その銃が人から人に移る話。最後どうなるか?結構面白いが、沢田研二の謎めいた虚無感が一番印象に残る。フランスのアラン・ドロンと雰囲気が似ている。 pic.twitter.com/fQuSYsSxS4— ジャンゴ (@DjangoMatuoka) August 25, 2022
金も権力も持ち得ないマジメだけが取り柄の高校生の少年・出水進(演・村上雅俊)がある日、若い女との不倫関係を清算しようとした阿久根が警察官から奪った官用けん銃『ニューナンブM60』を偶然手に入れてしまう。『ガバメントを持った少年』など、突如『指一本で人の命を奪える絶大な力』を手に入れた少年が主人公となる作品は多いと思うが、本作もまた、一丁の銃を巡って後戻りできなくなった者たちの行く末を巧みに描いた青春群像劇にして日活ロッポニカの最終作だ。
本作タイトルの『リボルバー』が示すのが、日本警察の象徴である『ニューナンブM60』ならば、当然本作品へ筆者が”マニア目線”で考察を向けるのは奪われたニューナンブをめぐる描写そのもの……なのだが、本作そのもの自体が魅力ある作品なのでストーリーを考察しながら語りたい。
以降ネタバレ注意。
主人公の清水は巡査部長でハコ詰めだ。学はあれど上昇志向はない。昇任試験も家庭を持つことにも興味はなく、今の地位と職責に甘んじている。上司の警部から勧められた亜代との縁談にも乗り気ではない。”堅実な主婦”風を吹かす亜代の口ぶりからは清水という一人の人間よりも、安定的な公務員という身分と家族用官舎こそが彼女の結婚目的だと気づいたからだ。
彼女に警察官拝命の理由を問われ、フラれたい一心からか『ピストルが撃ちたかったんです。日本でピストルを撃てるのは警官と自衛隊とヤクザだけですからね』と、心にもないことを言う。破廉恥な男を演じて見せ、どうにか亜代から逃れようとするものの、まったくの逆効果。亜代は熱をあげた。
だが、縁談を進めた上司の警部、そして亜代をよそに、清水は海で偶然出会った気立ての良いホステス・尾崎節子(演・手塚理美)に心を動かされ……。
腹のぷにゅんと出た中年になっても甘いマスクと知的でゆったりとした優しさのある大人の話し方では、そりゃあモテが止まらないはずだ。沢田研二、いや清水信彦。
勤務を終えた清水巡査部長のけん銃返納のやりとりもリアリティがあって見どころの一つ。
清水がニューナンブのグリップ下部を『ぐりぐり』と回す。けん銃吊り紐のナスカンをランヤードリングから外すためかと思いきや……。
ランヤードリングごと取り外してしまう描写は謎!?日本警察のけん銃を再現するにはやはりこの部分が重要なのだが。
だが、本作におけるニューナンブの描写でなんと言っても1番興味深いのは『安全ゴム』の存在だ。冒頭、乗り気でない見合い相手に付き纏われ、制服姿で公園のブランコで黄昏る清水巡査部長を背後から自分の革靴で引っ叩いて昏倒させ、ニューナンブを奪い去る中年サラリーマンの阿久根を演じる小林克也。
彼の大それた犯行の目的は、自分と不倫関係にあるOLと、その結婚相手を殺して自分も果てようとする計画をニューナンブで実行するためだった。彼の自分勝手ではた迷惑な行動と奪われたニューナンブM60は、やがて様々な人の人生を交差させてゆく。
結局彼は当初の目的を実行できず、自分だけ果てようと、自らの頭にニューナンブの銃口を向け、引き金を引くものの、物理的に引き金が引けない。それもそのはず、ニューナンブのトリガーには安全ゴムがはまっている。
彼はすぐにそれに気付いて安全ゴムを押しはずし、今度こそ引き金を引こうとするが、今度は精神的に引けなかったようだ。結局、安全ゴムの存在が思いとどめさせたのか、目的を果たせぬまま、彼はニューナンブM60を動物園のゴミ箱に放り捨てる。
ところが、捨てられたニューナンブを拾ってしまうのが、たまたま動物園に友達の少女・佐伯(佐倉しおり)とデートに来て、挙動不審な阿久根オジサンを見ていた高校生の出水進。彼は数日前、公園で偶然、見知らぬ女性への性加害現場を目撃したため、犯人の石森慎二(演・山田辰夫)にしこたま暴行され、そのリベンジの機会を虎視眈眈と狙っていたのだ。
ここで屈辱を果たせなければプライドを取り戻せず、将来ずっといじめられっ子のオーラを醸し、さらに他人から被虐される人生になると彼が思っていたのか定かではない。そんな彼を慮った神様(!?)は清水巡査部長のニューナンブM60をお与えになってしまったのである。ああ、なんと数奇な運命を辿るのか。清水巡査部長のニューナンブくんは。それとも進くんの出会いが悪いのか?
かくして、妙な正義に燃える彼は手にしたニューナンブのせいもあってか、そのリベンジの目的を間違った方向へ向かわせているようだ。
ともかく、本編第二幕『とある高校生の回転式けん銃(リボルバー)』の開幕だ。楽しめ皆の衆。
ニューナンブを拾ってしまった進が、直後に書店でその銃について調べる件(くだり)も、またマニア目線では興味深いシーンだ。おそらく彼は、ニューナンブを手に入れるその日まで、モデルガンにすら興味を持っていなかったのだろう。
『ニューナンブM60』・・・回転式拳銃。ダブルアクション式撃鉄を持ち、オーバーサイズ・プラスチック製のグリップを備えている。
……ダブルアクションってなんだろう!?
出典 映画『リボルバー 』
と、彼の言葉で語られるニューナンブ。彼は持ち前の探究心と勉学の情熱から、すぐにこの回転式けん銃(リボルバー)の構造と使い方を理解した。リボルバーなど、銃に興味のない者が初めて扱えば、まず弾倉の開放方法がわからないはずだ。ところが、やってのける彼。
なお、少年が読んでいた専門書は、ごま書房から刊行された銃器評論家・床井雅美氏の『世界の銃器』である。この本は厚い上に定価28,000円(2022年現在もまんだらけで5000円程度の値がついている)とすこぶる高いため、”アナログ万引き”で当該ページの情報をメモしていくのが、まさに80年代。
盗んだリボルバーの使用法は分厚い銃の専門書(28,000円!)を本屋か図書館で書き写し、スナックの名前と住所は電話帳で調べるしかなかった1988年
— カラ夫(ウッディー ロロ(万力)) (@noraneko_karao) September 7, 2017
同じ頃、銃を奪われた清水は県警を依願退職し、節子のヒモになり、自堕落な生活を送っていた。しかし、我王銀次演じる地元新聞の記者・工藤保から提供された『港での銃声』ネタをきっかけに、進少年の復讐計画を知ることとなり、進に恋心を抱く少女・佐伯と行動を共にする。かくして、リベンジのために札幌のすすきの界隈を根城にしているチンピラ(故・山田辰夫)を探すために少年は懐にニューナンブをひそませ、鹿児島から寝台特急で北上。そして追いかける元県警巡査部長の清水、佐伯の二人。
ところが、退職警察官と少女の奇妙な捜査線が展開される本筋とは絡むようで絡まない謎のコンビの物語が同時並行で進む。柄本明と尾美としのりの”自由業”コンビだ。筆者は当初、沢田研二演じる清水巡査部長が密かに原爆でも作っているのではないか探るため、警察庁から派遣された特命監察官かなにかと思っていたのだが・・・全国の賭場(競輪場)を求めて彷徨い歩く”旅するギャンブラー”であった。
だが本作におけるこのコンビ、”絶妙なストーリーテラー”として評価する声が多い。そう、彼ら二人のロードムービー的な要素もまた本作の魅力を押し上げている。どうも周囲が彼らを見る目は『同性愛カップル』のようであるが、江本演じる蜂矢圭介は女好きの至って普通の中年だ。一方の尾美演じる青年・永井新(あらた)はというと、女に興味はあまりないようだが。
Eric Claptonの「I Shot The Sheriff」のイントロをバックに、恋人同士のように互いに身をぴったりと寄せて速足で駅に向かう蜂矢と新の二人、妙にコミカルで”思わせぶりな演出”だが、監督が表現しているのはそうではなく、おそらく”験担ぎ”だろう。というのも、蜂矢がツキはじめたのは競輪場で新(あらた)と体がぶつかってから。ツキを逃すまいと、お互い体をぴったりくっつけ(ぶつけ)ているのだ。そして『俺ぁ保安官を撃っちまったのさ』という曲名はラストで蜂矢の”ツキ”に関する伏線になっている。
ついに札幌の地で復讐に燃える進に追い詰められた石森慎二(演・山田辰夫)も味がある。この人は『あの声』で『悲痛な叫び』を上げて命乞いするチンピラを演じるために生まれてきた人だよなあ……とあらためて思う。言うほど彼は多くの作品でそんなシーンばかり演じてきたか!?
ともかく、札幌市中心部にある大通り公園の芝生の上で、テレビ塔、焼きとうきび売店ワゴンのおばちゃん、観光客、通行人など衆人環視の中、高校生の進にニューナンブを突きつけられる石森。
ここでドアップになる”ニューナンブ”のプロップガン。表面処理がざらついていて金属感が足りないが、筆者が先日の記事で『潰れたワラジ虫型』なんて書いた『指かけ』も丁寧に再現されており、なかなか精巧な作りとなっている。先日の記事とは『SNSで物議を醸した沖縄のアキノ隊員のニューナンブっぽい画像騒動』である。
選挙演説中に“空包”を投げつけた女性が“ニューナンブのようなもの”の画像をツイートし騒然&大炎上!→削除からの意外な事実判明!
このプロップガンについては、おそらくCMCのモデルガンをベースに作られたものだろうか。調べると、面白いことがわかった。88年の同時期に日活では別の映画作品においても『警察官がけん銃を奪われる』『女性がその銃で復讐する』という非常に似たプロットの作品を制作している。その作品のタイトル名は非常に過激であるため、当サイトでは表記を控えるが、この作品において登場したニューナンブのプロップガンの製作者が執筆した記事が『アームズマガジン89年1月号』に掲載されており、気になる方はTwitterで検索してみるといいだろう。おそらく『リボルバー』に登場したニューナンブのプロップガンも、同じ方が製作されたのではないか。同記事によれば、ベースとなったモデルガンのフレーム修正を始め、撮影時における光の反射と塗装の関係、グリップのチェッカリング仕上げなど非常に苦労して製作された様子が窺える。
ともかく、佐伯の『撃っちゃダメ!(進くんの)ひとごろし!(下痢して死ね!)』の声で正気を取り戻しかけ、油断した進。その彼を蹴り飛ばし、腕からニューナンブを奪還しかけた清水であったが、宙を舞った銃は鹿児島から札幌まで追いかけてきた清水の”浮気”を許せない亜代の足元に。亜代はニューナンブの銃口を清水に向ける、ところが。その行方と結末は。
なお、柄本とともに味のある演技を魅せてくれた尾美は『土を喰らう十二ヵ月』でも沢田と共演している。共演は『リボルバー』以来。
ツトムの義弟・隆を演じるのは、 #尾美としのり さんです。映画、ドラマで大活躍の名バイプレイヤーです✨
ツトムの亡くなった妻・八重子の弟で、母チエとはギクシャクしています。弟も辛いよって感じですね。
沢田研二さんとの共演は映画『リボルバー』以来。こちらも本作と同じ日活配給作品。 pic.twitter.com/Rh906soZNH— 映画『土を喰らう十二ヵ月』 (@tsuchiwokurau12) February 23, 2022
かくして札幌で終えた鹿児島発の痴情の縺れ。誰かの復讐を止めるべく、奔走した清水であったが、清水自身もまた冷たくあしらった女の恨みを知らずに買い、復讐されたのだった。
一連のニューナンブをめぐって最も人生を翻弄された人。それは清水でもなく、石森でもなく、少年でもなく、亜代と言えるだろう。
結局、彼女だけがこのニューナンブで人を撃ち、最も重い罪を背負ってしまった。縁談の席で清水に警察官拝命の理由を尋ねた亜代は『銃を撃ちたかったから云々』とあしらうように返されたが、本当に撃ちたかったのは彼女自身だった。撃つほど清水を愛した亜代。撃たせてしまった清水。
そして、流れ弾の先となった蜂矢は『またツキはじめたぜ。タマに当たるなんてそうあることじゃない。しかも、御足(※お金のこと)だ』と最後まで脳天気な博徒を好演。考えてみれば、蜂矢も石森慎二に二度ほどぶつかっている。これは宝くじ並みの確率だろう。よく当たる男だ。
あなたじゃないわ。私は警官を撃ったのよ、と亜代が言ったかどうかは定かではないが、劇中中盤での『I Shot The Sheriff』をバックに歩く蜂矢と新(あらた)もまたフラグだったわけだ。そして、別れを告げる節子が、アパートの部屋の鍵を返す清水の背中に”一発”お見舞いした直後、本編で初めて『I Shot The Sheriff』の歌詞が流れる。
『リボルバー』(88)。藤田敏八監督最後の作品。脚本は荒井晴彦。
柄本明と尾美としのりの二人旅。
沢田研二のステテコ。
小林克也の『峰』。
山田辰夫のリーゼント。
手塚理美の部屋の鍵。
南條玲子のメガネ。
佐倉しおりの浴衣姿。
ラストの会話の呼吸は原作を凌ぐといっていい。
I shot the sheriff, pic.twitter.com/ab6JPF5Hhz— 櫻井 (@sakurai14128222) March 22, 2022
”伏線ってこうやって回収するんだな”という見本みたいなフラグの立て方だった。ともかく、張られた伏線はラストで見事に回収され、実に深い後味の残る物語だった。
こんなに伏線を張り巡らせて回収できるのか?
ちょっと強引だったが、終盤の展開は見事。
「うわっ」と声が出て、最後は感心してうならされました。
柄本・尾美コンビが素晴らしい!
これは名作ではないか。
☆☆☆☆☆
稲毛タイムス— 菅… (@inageshogi) September 14, 2022
なお、ラストでこの事件を報じる週刊誌(我王銀次が演じる記者の取材だろうか?)の記事見出しより。
平凡な情痴騒動に次々と舞い込んだ拳銃
渦中の誰もがリボルバーで過去とそして現在を清算しようとした
力が欲しい 愛が欲しい 何かが欲しい 何かじゃわからん だから一発の……
自分を飛び越えようとした人、発見しようとした人
一連の騒動では中年オヤジ、少年、そして亜代と、”殺意”を持ってニューナンブを握った人は多かったが、幸いにも誰も死ななかった。なお、清水さんは地元鹿児島で無事に1ヶ月以内に再就職できた模様だ。
しかし、一人で北海道に寝台夜行で乗り込んで、ラーメンは食らうわ、サウナで汗を流すわ、一人で屈辱を果たすべくススキノに乗り込むわ、実に行動力、肝っ玉のある高校生の出水進。筆者は18歳になるまでススキノなんて足を一歩も踏み入れられなかった。演じた村上雅俊の体当たり演技も目を見張るが、残念ながら彼のその後の芸歴は不明だ。
だが、本作における最大の怪演者は沢田でもなく、村上でもなく、赤井英和を凶暴にした風格で記者役の故・我王銀次だろう。将来を嘱望されながらも33歳という若さでこの世を去った我王銀次。全体を通して彼の出演は少ないのだが、序盤のスナックで清水への煽り取材で清水にビールを頭からかけられた彼が静かに『このドジポリが……』と言ったかと思えば、本気で清水に殴りかかり大乱闘になるシーンは大通り公園でニューナンブの銃口に恐れ慄いた山田辰夫じゃないが、思わず筆者もズボンに染みを作りそうになる……。
鹿児島県、北海道札幌市のススキノ界隈(ススキノはこの35年、道路工事が止まない日はないのか?)、回想としての上富良野らしきラベンダーの美しい風景、開花時期が過ぎ、谷地坊主みたいになったラベンダー畑の丘はビジュアル資料としても一見の価値あり。なお、蜂矢が出入りする新(あらた)の古びた自宅アパート『西田荘』の窓から見える二軒隣の某医院の看板から、ロケ地は鹿児島市西田二丁目だったようだ。Googleストリートビューで見ると、この界隈は今では見違うほどきれいに整備され『西田荘』跡地にも立派なマンションが建つが、その隣の古民家とその屋根飾りの形状は健在で、劇中にもそれが一部写っている。34年前、新(あらた)がこの場所にある『西田荘』の部屋でトーストを焼き、蜂矢がマヨネーズを塗って炭酸の抜けたコーラで流し込んでいたのだ。感慨深い。
ともかく、88年当時の街並みや人々が懐かしい。『となりのトトロ』の公開年でもあった1988年の当時は、筆者もこんな大人たちのドロドロとした痴情などとは別世界に生きる純粋無垢な子ども。『レモンエンジェル』や『ドクター秩父山』などのテレビアニメを楽しむ児童だった。いやな子だよ。
この映画の見所を企画を担当した角田豊氏(日活 メディア事業部門 編成部員)が日活公式サイトで語っている。
―『リボルバー』のみどころを教えてください。
角田 少なくともあの時代を描いていたんじゃないですか。1988年とは、ああいう時代でしたよっていうことにつきると思います。群像劇でありロードムービーだから、人もそうだし、街並みも当時のままでしょ。明らかに今とは違う日本が映ってる訳だから。
上記ページでは他にも本作『リボルバー』の裏話が満載だ。
それにしても、運命が数奇すぎる本編のニューナンブM60。『神様のニューナンブ』って題名でもいけたのではないか。神様が振ったのはサイコロではなく、ニューナンブだった。今まさに一丁の銃で人の命を奪おうと画策する者を巡って、それを阻止すべく夜の繁華街を駆け抜ける元警官、野次馬的に追いかける者、衆人環視の中での発砲……。同じくニューナンブを鮮烈に描いた『新宿鮫』を思い起こすのは筆者だけだろうか。両作の原作者とファンに失礼なのは重々承知なのだが、まさにライトな『昭和の新宿鮫』という感じ。
なお、ラストシーンの札幌の大通り地下街を駆け抜ける沢田研二らを追うカメラワークは当時の手ブレ補正もない時代、滅茶苦茶な揺れが激しく、酒飲んで見たら絶対に悪酔いする。飲んでいなくても悪酔いした。
妙な後味が残る80年代青春群像劇の知られざる佳作『リボルバー』。そのニューナンブ、その銃声、せつなさ炸裂。