警察無線の系統 その4 『WIDE通信』

1991年から配備されたWIDE通信とはWireless Integrated Digital Equipmentの略で、警察の自営回線システムによる警察版自動車電話および携帯電話である。

主として都道府県警察本部を超えて指揮命令を下す立場にある警察庁のキャリア警察官および、指揮を受ける側の都道府県警察本部の幹部警察官などに貸与された。

前身システムは警電(けいでん)こと警察電話

WIDEは350MHz帯域に整備された警察の専用通信回線いわゆる警電(けいでん)を前身としている。

警電は北海道から沖縄まで幹部車両と各警察本部間や警察関連施設で連絡を取れるほか、公衆回線にも接続できるもの。すなわち、それぞれの県警本部の管轄を跨いだ通信ができるため、移動警電は広域犯罪にも対処できる非常に重要な警察の通信である。

すなわち、現在一般的な携帯電話と全く同じ利便性の高い通信であり、車内から全国どこの警察施設でも、あるいはそれ以外のNTT一般加入電話番号でも電話をかけることが可能であった。

また三つの端末間で同時通話ができるため簡易的な会議等を行うことも可能であった。

警電には固定とパトカー/覆面パトカー車載用の移動警電があったが、通常の基幹系や署活系など警察無線同様にアナログであったため、興味本位のマニアのほか、情報屋、株893、仕手筋、CIAなどが傍受していたとされる。傍受対策として10番Aも適宜使われたが、解除機の普及に伴い、デジタル化が急がれた。

アナログ警察無線で導入された音声反転式秘話が『10番A』と呼ばれた理由

方式はMCA(マルチチャネルアクセス)方式のため、一定時間後または通話終了後にチャンネルが変更される。

WIDE端末の特徴

旧システムであった警察電話をデジタル化および高機能化させたものが、1991年から導入が始まったWireless Integrated Digital Equipment、いわゆるWIDE通信である。

WIDEには車載型端末および、携帯可搬が容易な携帯型端末があるが、車載型は幹部警察官にあてがわれた専務カーに搭載されていた。受話器を上げるだけでダイヤルせずに特定の車載端末に電話をかけられる『ホットライン機能』も持っている。

96年からは幹部警察官にハンディタイプのWIDE端末『WD-1』の配備が始まった。WD-1はまさに当時の一般的な携帯電話のような外観をしており、液晶ディスプレイや着信ランプなどを備えるほか、PTTスイッチと非常ボタンを本体横に配している。唯一、携帯電話に見えないのはそのアンテナ。携帯無線機のように根元が太く、伸縮もできないため、無線機然としているのが特徴だった。

WIDEは95年に全国配備を完了している。

無線のような同報性を持つWIDE

警察の内線ばかりでなく、一般回線へも接続でき、自動車電話・携帯電話のように通話ができるほか、送信ボタンを押している間のみ音声送信状態となるプレストーク方式(単信)機能を利用することで、複数の端末に同時に指令が可能。

民間の携帯電話のサービスエリアが広がったことにより、その優位性は失われつつあったが、一般の携帯電話の通話が困難な山間部や僻地などで重宝したという。

2018年から更新中の新型IPR無線にWIDE通信は統合される。

デジタル警察無線MPR、APR、IPR、その変遷の歴史